第30章 あなたがいない場所
一分後。
「―――・・・本当にごめんなさい・・・」
『いいんじゃよ、ワシはそなたに会えたのだから。気にすることはない』
ネネがくわえていたヘビの正体がわかったところで、謝罪タイムになった。
てっきりネネがエサをとって来たのかと・・・なんて口が裂けても言えるはずもなく、思ったということだけでも充分失礼なのだが、あの状況で、私の咄嗟の声にもスイレンは見事にこたえてくれた。
スイレンはヘビが何なのか気が付いていたようで、人型になると、片手でキャッチした。
そこで普通に生きていることに気付き、その流れでそのヘビの正体を思い出したのだった。
「あの・・・長さんっていうんですね」
『みんながそう呼んでいるだけじゃ。ワシの”にっくねぇむ”とやらじゃ』
『そうそう長、使い方合ってるよー』
『やめて、ハルが引いてるから』
思ったより元気そうでなんだか安心した。
スイレンはオオカミの姿に戻っていた。
(実験体にされてたから、何かしらトラウマがあるんじゃないかと思ってたんだけど・・・)
「元気そうで、何よりです」
『お互い、な』
「そういえばこの前、兄がお世話になったみたいで・・・お礼を言いに来たんです」
『お礼?』
「はい。なんでも、タダで薬を作ってくれたとか。ネネが作ってくれたんだってね、ありがとう。イタチ兄さんが教えてくれたよ」
大樹に背中を預け、私の隣にスイレンが、膝の上にネネ、そして、私の首に長が巻き付いていた。
ネネ以外の他の子もちらほら見受けられ、私たちを遠目に見ているが、近づいては来なかった。
『なんや、アンタそれ言うためにここまで来たんか?』
「え?あー・・・」
『律儀なヤツやなあ。でもなあ、ええんよ。あれで足りるとは思ってないけど、ウチは少しでもアンタに恩を返せたと思うてるから』
「ありがとう」
正直、もう用事は済んでしまった。
今日はお礼を言うためだけに寄ったんだし、だけど、まだ帰るには早すぎる。
『あ、そういえば主様。この前の薬、もうハルに渡したん?』
『あ?あー・・・まだ』
『何ならウチが今、説明したろーか?』
『・・・じゃあ、お願いしようかな。僕はちょっと寝るから』
「寝るの?」
『うん。キミが撫でてくれたら、気持ちよく眠れそう』
「はいはい、おやすみ」