第30章 あなたがいない場所
「なんだと?」
その言葉を口にした瞬間、綱手は鋭い目付きで私を睨んだ。
「こわっ・・・おっと、失礼」
「・・・」
「ま、誰にだって大切な人はいますよね。みんなその人をなくしたくないし、ずっと傍にいてほしい。綱手姫、あなたはもうお分かりだと思いますが」
「どこでそれを聞いたのかは知らんが・・・何が言いたい?」
「もうサスケはいませんし、もうここに来ることはないと思ってたのですが・・・気が変わったんで、時々こちらに顔を出させてもらうことにしますね」
「・・・?」
「ここにはまだ、ナルトくんやサクラちゃんがいますしね。それに、ここは私にとっても大切な場所ですから。木ノ葉を守るためなら、私もできる限りのことをします。そのために、どうぞ私を利用してください」
「・・・お前は、木ノ葉の人間ではないのに?」
「三代目様への恩返し、という口実でどうでしょう?」
口から出る言葉が、なんだか、すごい方向に向かっていってる気がする。
(・・・ちょっと、ヤバくね?私何言ってんの、いやでも今さら撤回とか無理だよね)
我に返ったように、今さらながら周りが見えてきた。
チラリとスイレンを見ると、目が合う。
『あ、今我に返ったんだ。・・・大丈夫?』
「だ、・・・」
(大丈夫じゃない!)
心のなかでそう叫べば、スイレンに同情的な目で見られた。
「あ、帰ります。綱手姫、今後ともよろしくお願いしますね」
「・・・ああ。わかった」
「あと、今度からは暗部、つけなくていいですよ」
そう言って、若干急ぎ足でドアの方へ向かう。
最後までこの調子を保とうとした結果、貼り付けたような笑みで部屋を出たんだと思う。
だが、部屋を出たといって気を抜くことはできない。
いつどこで誰が見ているかわからないからだ。
暗部とか。
「・・・帰ろっか、スイレン」
もう疲れた、と顔に出ていたのか、スイレンは『おつかれさま』と笑った。
『・・・さ、乗って?早く帰ろう』
「うん」
私がスイレンに乗ると、スイレンは近くの開いていた窓から飛び出した。
「うおおおおお!?」
予想もしていなかった行動に、思わずそんな声が出る。
地面に着地したときふと見上げると、上からカカシが覗いていた。