第30章 あなたがいない場所
「・・・ま、そうだな」
「聞きたいのはサスケのことですか?そのことなら申し訳ないのですが、私は何も知りません」
はは、とつけ加えたように笑えば、綱手が無表情で私を見る。
品定めされているような気分になりながらも、口角を上げた。
綱手の隣にいるシズネだが、彼女は彼女で眉間にしわが寄っていた。
「・・・そうか。知らないことは聞けないな」
「・・・」
「だが、なぜ私にサスケのことを知らせた?シカマルたちから聞いた。お前が、敵か味方かわからなかった、と」
「あー・・・」
綱手の言いたいことはわかった。
たぶん、サスケが入った入れ物を君麻呂にもナルトたちにも渡さなかったことを言っているのだろう。
「確かに、私はナルトくんたちにも大蛇丸の手下の方々にもサスケは渡そうとはしませんでした。ですが、それはあくまで過程であって、結果、サスケは里を抜けた。綱手姫、サスケが里を抜けたのは私のせいだとおっしゃっているのですか?」
「・・・いや、大蛇丸が原因だ。お前のせいだとは言っていない。だが、お前はサスケを止めることができたんじゃないか?」
「いえ、無理です。たぶんサスケは何を言っても里を抜けましたし、一族の仇を打つためには、この里にはいられないと思ったからではないですか?」
「・・・」
「綱手姫に知らせたことですが、もしかしたらサクラちゃんが寝坊しちゃうかなーと思ったからです」
我ながらふざけた答えだと思う。
だけど、本当のことを言うつもりなど毛頭なかった。
「綱手姫、サスケは強さがほしかったんです。うちは一族にだけ現れる特異体質の写輪眼ですが・・・あれはすばらしいですね。そう思いません?」
「・・・確かにな。大蛇丸は現に、それがほしくてサスケを狙った。なんだ?お前も写輪眼目当てだったのか?」
「まさか!私はサスケ自身が好きですし、そんなこと考えたこともありませんよ」
自分が悪者のようだ。
ペラペラと心にもないことを話すのは、疲れる。
「私はね、もし、この里で一人しか助からないというのなら、サスケを助けますよ。・・・綱手姫、あなたは誰を助けますか?」
「・・・」
「弟さんや恋人はもういないし、やっぱり助けるのはナルトくんですか?それともシズネさん?自来也さま?」