第30章 あなたがいない場所

「―――・・・アンタ、マジで心臓に悪いからやめてくれる？」

『だって、早く帰りたそうだったから』

「ジェットコースター乗った気分よ・・・乗ったことないけど」

『じぇっと・・・こー、すたー？』

「なんでもない」


スイレンは宣言通り、すぐさま木ノ葉を出た。

そりゃもう、一直線に。


「ねえ、スイレンどうしよう。綱手にあんな口きいちゃった」

『今呼び捨てにしてるけど、それはいいの？』

「これは気にしないで。癖みたいな感じだから。あー・・・綱手を怒らせて、戦って勝てる気がしない・・・そりゃそうだ、三忍に勝てるわけないだろ・・・」


綱手は終始、私を警戒し、私が木ノ葉の敵かどうかを見極めていた。

あの人が火影なら、木ノ葉は大丈夫だと思う。

そして、私自身が言った言葉も決して偽りではない。


（うちはイタチが汚名を被ってまで守った里。私は、その里を守りたい）


「・・・結局、サクラちゃんに会えなかったな」

『ま、仕方ないでしょ。また今度行けばいいじゃん。・・・あ、このまま帰る？』

「んー・・・」


思考を切り替え、ふと思いつく。


「・・・いや、ネネのところに行く」

『ネネ？また急だね・・・どうしたの？』

「お礼よ、お礼」

『？』

「この前、イタチ兄さんがお世話になったそうじゃない。言ってたよ」

『え』

「それはそうと、私のこの呪印のことだけどさあ・・・なんで大蛇丸につけられたことがバレたのか、アンタ、心当たりある？」

『・・・・・・』


黙るスイレン。



「どう考えてもアンタしかいないよね」

『・・・』

「言わないでって言ったはずだけど？」


あれはだめだった、本当に。

イタチには「気まぐれだと思う」なんて言ったが、あの大蛇丸がそんな気まぐれで呪印なんてつけるはずがない。

そんなこと、私にだってわかる。

どのくらいの期間を行動を共にしていたかは知らないが、多少関わっていた人間ならば、そのことはわかるだろう。

厳しい表情で聞いてきたイタチや、少し殺気がもれていた角都だって、私の答えに納得しているとは思えない。


「何も知らない子どもでいるのも、大変だなあ」


それでも私に問い詰めたりしなかったのは、私があくまでも子どもであったからだろう。