第30章 あなたがいない場所
ついたのは、木ノ葉にいたころ、イタチが好きだと言っていた団子屋さんだった。
外に出されている椅子に腰掛け、隣では団子を五本平らげたスイレンが満足そうに、尻尾を揺らしている。
団子を食べるときには人型になるのに、食べ終わったらオオカミ姿に戻るので、私が全部食べたみたいに思われそうだ。
「よく食べるね」
『おいしいから』
そう言うスイレンは変わらない。
(そういや、スイレンはサスケ兄さんが里を抜けたって聞いても、痛くも痒くもないって感じだったなあ。自分には関係のないことだって思ってるのかな)
(スイレンは、私がいなくなったらどうするんだろう。泣いてくれるのかな)
『・・・ハル?』
「・・・なに?」
『たそがれているところ申し訳ないんだけどさ、なんか、見られてる』
「誰に」
『上。屋根の上に面の人間が二人。それで、前の方から一人』
「マジで?」
『マジで』
このあとサクラちゃんの様子を見に行きたかったのに・・・と予定がぶち壊しされた気分になる。
思わずため息をつくと、私の目の前に立つ人がいた。
「久しぶり、クロ。会いたかったよ」
「あー・・・どーも、カカシさん。スイレン、大丈夫みたい」
『そう?』
「うん。たぶん」
目の前に立つ男は、カカシだった。
「まーた甘いもの食べてるの?」
「私は食べてませんよ?スイレンです」
「ま、どっちいいけどさ。ちょっとオレについてきてくれない?」
あ、本題に入ったなと思った。
「・・・このあと、用事があるんですけど」
「それ急ぎの用?そうじゃないなら、オレの方、優先してくれない?」
「・・・帰りたいって言ったら?」
「強制的につれていくけど。なんせ、五代目からの命令だからね」
(五代目・・・綱手か?私に何の・・・ってアレか)
アレとは、私がサスケが里を抜けること直接綱手に言いにいったことだ。
私自身は分身だったが、それしか思い当たることがない。
「綱手・・・姫?」
「そ。お前に聞きたいことがあるって」
思わず綱手のことを呼び捨てにしそうにななって、あとからつけ加える。
ちなみに「姫」というのは角都が言っていた。
この呼び方は古いらしいが、私はなんとなく気に入っていた。