第29章 スイレンとイタチ
「そうだよ。ちょっと、いろいろあってね・・・コレ、つけられちゃったの」
「・・・いろいろ?」
「うん、一から説明するのは面倒だから省くけど・・・でも大丈夫。あの人には、私がうちは一族っていうのはバレてないし、たぶん、気まぐれみたいなものだと思う」
不安と焦りが見え隠れするハルの声。
それはイタチに対するもので、バレてしまった以上、嘘はつかないとさっき言ってしまったし、本当のことを言っているのだろう。
(やはり、言いたくなかったみたいだな・・・)
イタチが何を言おうかと、視線を泳がせると、外からかすかに声が聞こえた。
「旦那、お・・・」
「・・・る・・・ぞ!」
「しず・・・に・・・か」
「おい!んぐッ・・・」
最後のはデイダラの声だ。
今のは完全に聞こえた。
ハルも気が付いたようで、ドアを見たあと、イタチへ視線を向ける。
「・・・ちょっと待ってろ」
「うん」
イタチはハルの視線に応えるように、ドアをバァン!とやや乱暴に開けた。
「イテッ!おいイタチ、何すんだ!おでこに当たっちまったじゃねーか、う、ん・・・・・・あ、やべ」
「デイダラ。お前はここで何をしているんだ?」
「オイラだけ!?いや、これは飛段が・・・」
「あ、お前汚ねーぞ!オレになすりつけんじゃねえ!もとはといえば、サソリが言い出したんじゃねーか!」
「ふざけんな!オレ関係ねーだろ!つーかオレが言い出したんじゃねえ、鬼鮫だろうが!」
「は?私を巻き込まないでくださいよ」
「そんなこと言って、お前も結局ついて来ているんじゃないか」
「角都さん・・・あなたね・・・」
どうやらドアの外にいたのは全員だったようだ。
イタチが勢いよくドアを開けたのはわざとで、デイダラのおでこに当てたのもわざとだろう。
イタチの無表情が際立っている中、後ろからハルが顔を覗かせた。
「みんな・・・何してるの」
「あ、ハル。説教どうだったか?うん」
「別に怒られてないけど・・・デイダラ、おでこ赤いよ」
「やっぱり赤くなってんじゃねーか!ありえねー・・・うん!」
「盗み聞きをするようなヤツに言われたくないがな。むしろこちらがありえないと言わせてもらいたい」
ぐっ・・・と言葉に詰まったデイダラを押しのけ、後ろから角都が出てきた。