第29章 スイレンとイタチ
「おいデイダラ、邪魔だ。どけ」
「もう、どかしてるじゃねーか・・・うん」
そんなデイダラの声も無視し、角都はイタチとハルの前に立った。
「イタチ・・・いや、ハルに聞いた方がいいな。ハル、さっきの話は本当か」
「さっきの・・・?」
「オレが封印式を施したその呪印の話だ。さっき話していただろう」
ハルはあからさまに苦虫を噛んだような表情をして角都を見上げた。
コイツ、こんな表情もするのか・・・と頭の片隅で感心したあと、もう一度聞いた。
「あの話は、本当か?」
ハルは、「・・・そうです」と答えた。
イタチが「おい」と角都を止めようとするが、意味がなかった。
「イタチ、ここのルールを忘れたのか?」
「・・・」
「裏切り者は容赦なく葬る。それがルールだ」
大蛇丸はかつてサソリとコンビを組んでいた。
勝手に抜けた大蛇丸の行方を掴むため、ペインはイタチとサソリを組ませて、大蛇丸捜索任務をさせると言っていた。
だが、あくまでそれはイタチに言ったものであって、角都には伝わっていない。
裏切り者がきらいなのか―――そう思ったハルは、イタチの背後から出てきた。
「そうです」
「え?」
「これ・・・あの人と偶然鉢合わせしちゃって。なんか、つけられちゃって・・・。ごめんなさい、あの人の居場所まではわからないんです。お役にたてなくて、すみません」
今度は、ハキハキとした口調でハルは答えた。
「コレを封印してもらった借りがありますから、きちんとお答えします」
「・・・・・・お前、本当に子どもか?」
「子どもですよ」
笑って答えるハルに、角都は「そうか」と言った。
「悪かったな、思い出させて」
「いえ、平気です」
角都は聞きたいことは済んだようで、その場を去ってしまった。
鬼鮫の「夕食を作るので、みなさん手伝ってください」という言葉で、自然とその場はお開きになった。
『スイレンとイタチ』
“隠しごと”