第29章 スイレンとイタチ
「二人も背負うのは重いでしょ?」
イタチはその言葉の意味に気づくと、「どこで?」と聞いた。
「さあ?」
スイレンはそう言うと、にこりと笑った。
そこにタイミングを見計らったように、ネネが入ってきた。
「お兄さん」
「なんだ」
「・・・とりあえず、咳止めの薬、作っといた。薬草やらなんやら詰めたから、匂いは堪忍な」
そう言って、ネネが傍に置いてある袋をさす。
イタチがそれを取ると、確かに匂いがした。
気にするほどではなかったので、お礼を言い、問いかける。
「・・・何がいい?」
「は?」
「いや、お代の話だ。金を使うのなら、金を払う。もし違うものがいいと言うなら・・・」
「ハハ!アンタ、おもしろい人間やな!いらんで、お代なんて」
「・・・」
「ハルはな、ウチらに恩返しとかさせてくれへんのんよ。せやから、せめてハルのお兄さんであるアンタに返そうと思う」
ネネはそう言うと、照れたような笑い声をだした。
そして、どこかへ行ったかと思えば、小さな袋をくわえて戻ってきた。
「主様、頼まれてたもの作っときました」
「ん?ああ・・・ありがと。悪いね」
「それ、あんま飲まん方がええよ。頻繁に飲むと効き目が薄れるから。あ、お兄さんの方は気にせんでもええよ」
そして、スイレンに何やら耳打ちしたあと、いつも通りの元気な声を出した。
「お兄さん、今度また来てもらえる?」
「あ、ああ・・・」
「よろしゅうな。今度はハルも連れてきて!」
どうやら帰るようで、スイレンはネネをなでたあと、イタチを見た。
「帰るけど、置いていくよ?」
スイレンはいつでも帰れるらしく、イタチのことを待っているようだった。
「いや、オレも帰ろう」
イタチはそう言うと、スイレンのあとに続いた。