第29章 スイレンとイタチ
ネネに連れられ、イタチは木の幹へ腰かける。
ふり返れば、動物たちがじっとイタチを見ていた。
「あー、ごめんな?あの子ら、あのハルのお兄さんに会えたのが嬉しかったみたいで」
「・・・ハルが何か関係があるのか?」
「あるに決まっておる。ワシらはハルに助けてもらったようなものだからな」
「ちょっと、長。変なことせんでよ?」
「いいだろう?話相手になるだけだ」
ヘビはイタチと話したいらしく、興味深々とでもいうように傍に来た。
どうやら、このヘビがここのリーダー的存在らしい。
ヘビはネネの体を伝って首に巻きつくと、そのまま話し出した。
「もともと、ワシらはあの男の実験体だった。それまでは普通に暮らしていたのに・・・ここにおるヤツらはみんなあの男に連れてこられたのだ」
「・・・あの男?」
「お前さんは知らないだろうよ。“大蛇丸”という女のように髪の長い男だ」
「・・・!」
イタチはその言葉を聞くと、少しだけ顔を厳しくした。
「ん?その反応は・・・どうやら知っているようだな。知り合いか?」
「いや・・・ちょっとな」
「そう身構えなくとも、詮索をする気はない。お前さん、そういう人種のようだからな」
「・・・そう、見えるか?」
「ああとも」
「はいお兄さん、さわるよ。長、ちょっと動くよ」
「どうぞ」
ネネがイタチの首元をペタペタとさわる。
さらに胸元、腹と続き、どこか念入りにチェックするようにさすったり、手を当てたりしていた。
不審そうに見ているイタチに気付いたのか、いつの間にかスイレンが近くにきており、補足のように話し出した。
「コイツ、悪いところを見つけるのはすごいんだよ。さわったり、実際にふれることでわかるみたいなんだけど」
「・・・すごいな」
イタチは他には何も言わなかったが、その言葉にはきちんと感情がこもっていた。
「へえ。僕たちの前でもそんな声出すんだ」
「は?」
「いや、こっちの話」
なぜか感心したように言うスイレンを気にもとめず、ヘビは話を続ける。
「ワシは最初の実験体でな。このネネはワシの改良版といえばわかりやすいだろう」
「ちょっと、長・・・」
「いいだろう?お前だってこの男を信頼しているのではないのか?」
「いや、そうだけど・・・」