第29章 スイレンとイタチ
「総動員って・・・ほら、あのヘビは何してるの?姿見えないけど」
「長(オサ)のこと?」
「そんな名前だったっけ?ま、いいや。アイツのところに案内してよ」
「ええけど・・・主様が自分から言い出すの珍しいなあ」
「ちょっとね。その男を診てもらいたくて」
そこでようやく、フクロウはイタチに意識を戻したようで、イタチの方へ飛ぶと肩へ乗った。
「んー・・・たまらんなあ」
「・・・は?」
「やっぱりイケメン・・・目の保養やな。あ、イケメンさん、ウチのこと覚えとる?」
グイグイと近づいてくるフクロウに若干引きながらも、さっき思い出せそうだった記憶をたぐり寄せる。
「以前・・・一度、オレたちのアジトに来たのと・・・昔、ハルの手紙をオレに渡しに来た、か?」
「そう、正解や!ウチな、ネネっていうねん。よろしゅう!」
「・・・ああ」
表情に変化は見られないが、声を聞く限りは楽しそうだ。
「じゃあ、さっそくやけど行くで。ウチについてきて」
ネネはそう言うと、イタチの肩に乗ったまま言った。
「ん?行かへんの?」
「いや・・・」
「ならまっすぐ進んでな。ウチ、動くのきらいなんよ。なんで、このままおらしてもらうわ」
ネネはそう言うと、クルル、と鳴いた。
移動中、ネネが話しかけてきた。
「アンタ、名前は?」
「・・・イタチだ。うちはイタチ」
イタチは名乗ることに躊躇があったものの、相手も名乗ったあとだから、言うものだろうと考え、言った。
すると、ネネは「ほう!」と驚いたような、嬉しそうな、そんな声をあげた。
「なんだ」
「うちは一族か!ほなやっぱり、アンタ、ハルのお兄さん?」
「・・・妹を知っているのか?」
「うん。かれこれ長い付き合いになるなあ・・・―――あ、ついたで」
ついたのは、人も入ったことがないであろう、さっきいたところよりももっと奥だった。
「長(オサ)ー?主様が来たで」
ネネは迷うことなく、進んでいく。
それにスイレンとイタチが続くと、そこには白いヘビの姿があった。