第29章 スイレンとイタチ
「―――おい、どこまで行くんだ?」
「いや、もう着いた」
そう言ってスイレンが止まったのは、見渡す限り木々のところだった。
広い森の中なので、不用心に入れば迷ってしまいそうだ。
イタチが今自分が来た方向を見ていると、―――ふいに斜め後方から殺気を感じた。
「!!」
ほぼ反射速度で身をひるがえし、持っていたクナイを構える。
(一人?二人?・・・―――いや、これは・・・)
殺気は、イタチたちを囲んでいた。
「あ、気づいた?ま、頑張りな」
「お前が、仕組んだのか」
「仕組んだ、だなんて人聞き悪いこと言わないでよ。なに、遊びだよ、遊び。それに、コイツらも人間はきらいでね」
「・・・」
「大丈夫、コイツらそこまで強くないし。お前は自分たちの縄張りに入った侵入者だから、攻撃するのは仕方ないかもね」
そして、イタチを囲むように出てきたのは―――
「・・・動物?」
「殺すのはナシ。それがルールね」
スイレンがそう言い終えた直後、動物たちは一気にイタチ目がけて向かってきた。
―――とはいえ、イタチにとっては、苦労するような相手ではなかった。
向こうは噛もうとしてくるので、それを躱しながら致命傷にはならない程度の攻撃をする。
そして、しばらくすると、今まで相手をしていた動物たちとは明らかに際立った殺気を感じた。
―――と、その瞬間。
イタチの目の前に“何か”が現れた。
クナイを交え、蹴りを繰り出してくる。
それを避けると、距離をとった。
「・・・人間?」
女だった。 銀髪の女。
(コイツ・・・どこかで、)
女はさっきまで相手をしていた動物たちよりも強かったが、それでもイタチにとっては大した相手ではなかった。
最後、女の首元にクナイを当てる。
女はピタリと動きを止め少し笑うと、ボフン!と煙が女の体を包み、その中からフクロウが出てきた。
「主様!来るなら来るって言ってくれます?おかげでウチら、総動員やないですか」