第28章 途中
「君麻呂さん。そんなに大蛇丸サマに心酔するのはどうしてですか?」
「・・・!!」
君麻呂は私の質問には答えることなく、私に拳を振り上げた。
入れ物ごと避け、抱えて少し離れたところに着地する。
君麻呂はじっと私を見つめていた。
と、息をつく間もなく、横から多由也が飛び掛かって来た。
「あ、―――」
「やべ」と呟くと同時に、私をかばうような形で人型のスイレンが多由也を迎えた。
「ッ!!」
『フン』
スイレンが多由也を思いきり殴ったらしい。
彼女は「ぐっ」と苦しそうな声をあげて、木に体を打ち付けた。
「あー・・・ありがとう、スイレン」
『ん』
君麻呂の体はもうボロボロだというのに、そうは思わせない速さだった。
君麻呂と多由也のギロリと私を睨みつける目には、警戒が強く滲んでいた。
「敵意半端ない・・・」
「ソレを返せ。その器は、大蛇丸様の大切な器だ」
「・・・君麻呂さん、私とお話をする気は?」
「ない」
「そうですか。じゃあ・・・」
「―――ちょっと遊ぼうよ」
(とか言って・・・ちょっと戦ってみたいだけなんだよね。こんなこと言ったらバチが当たっちゃうかな)
「スイレン、入れ物よろしく」
『ほどほどにね』
「わかってるよ」
入れ物をスイレンに任せ、私は君麻呂の前に立つ。
君麻呂は私の後ろにある入れ物をじっと見つめたあと、私を見た。
「多由也。僕はコレを片付けますから、そちらのゴミ二人を頼みましたよ」
「ああ」
どうやら私はコレ扱いだそうだ。
なかなかの毒舌に終始苦笑いをするしかない私だったが、「ゴミ二人」と言われたナルトとシカマルは頭にきているようだった。
「テメー!!誰がゴミだと!?」
「おいナルト!勝手に行動するな!」
君麻呂はそんな二人をチラリと見ただけで、すぐに私に視線を戻す。
「いきますよ」
そう言って、君麻呂が足に力を入れたのがわかった。
「どうぞ」
私も、君麻呂に向かってジャンプする。
(体術がものを言うな・・・私のレベルがこの人に通用するか・・・)
内心、不安だったがもう戻れない。
自分で蒔いた種は、自分で後片付けまでしなければならないのだ。