第28章 途中
なぜサスケが里を抜けたことが分かったのかというと―――。
「今朝早く、綱手さまに直接話をしに来たヤツがいるらしい。“うちはサスケが里を抜けた”と」
「・・・どうやら、情報源はクロらしい」
―――数時間前。
徹夜で仕事を片付けていた綱手だったが、すでに船をこいでいる状態だった。
火影補佐であるシズネは書類を取りに行っており、火影室にはいなかった。
そこに、一つの少女の声が、綱手の耳に届いた。
「綱手さまー?起きてくださーい」
「・・・あ?」
口の端のよだれを拭い、身体を起こす。
机に突っ伏していたせいか、書類が皺になっている。
「やべ・・・またシズネに何か言われる」
椅子に背中を預けたところで、思いとどまる。
「さっき、何か声がした気が・・・」
キョロキョロと部屋を見渡すと、綱手の目に一人の少女が映った。
少女はニコニコと人懐っこい笑みを浮かべているが、それに対して、綱手の表情は怪訝なものだった。
「・・・お前、どうやってここに入った?」
「え?あー・・・フツーに?」
そう言ってドアを指さす少女。
「クロ」と名乗った。
綱手は、どうやって少女が部屋に入れたかが気になっていた。
「・・・外には、暗部がいるはずだが」
「ああ・・・暗部の皆さんにはちょっと、分身の方を追ってもらっています。ごめんなさいね、だから、今のここの警備は薄いんですよ」
「・・・用件は?」
「やだ、怖い顔しないでくださいよ。私はただ、綱手さまのお耳に入れたいことがあるだけなんです」
そう言って、笑うクロ。
クロからは敵意は感じられなかった。
「・・・なんだ?」
「うちはサスケ・・・ご存じですよね」
「ああ。知っている」
「・・・彼、里を抜けます。大蛇丸のところへ行くらしいですよ。早急に対処されたがよろしいかと」
思わず綱手の眉が寄った。
初対面でいきなりそんなことを言われても、信じられるわけがない。
そんな綱手を心の内を知ったように、少女は続けた。
「暗部を向かわせて、ご自分で確かめられては?それじゃあ、私は失礼しますね」
「あ、おい!」
少女は分身だったようだ。
ボフンと音を立て消えた直後、シズネが乱暴に扉を開けて入ってきた。
「綱手さま!うちはサスケが―――!」