第27章 「オレにとって」
「ああ」
サスケは、私の方を見ずに言った。
「ねえ、里に残るっていう選択肢はないのー?」
「ない」
「・・・へえ、そっか」
そこで会話が途絶えた。
しーんと静まる部屋で、スイレンが私を心配そうに見上げていた。
「大丈夫」と頭を撫でたが、スイレンの表情は変わらなかった。
「お前は・・・」
「?」
「お前は・・・いいのか?」
「・・・何が?」
「本当に、復讐しなくても」
サスケはもう額当てをしていなかった。
ベッドの脇に置いてあるカバンには、ここを出るのに必要最低限の物が詰め込まれているのだろう。
第七班で撮った、あの写真は、きちんと写真立てに収まっていた。
その横に置いてある額当ては、なんだか寂しく感じた。
「この前、大蛇丸の使いがオレのところに来た。その時、お前のことも捜していた」
「・・・遠慮しとくよ。悪いけど、私は大蛇丸があまり好きじゃないんだよねー」
「そうか」
サスケはそう言うと、フッと笑みを浮かべた。
「何かおかしいことあった?」と聞くと、サスケは笑みを浮かべたまま言った。
「お前、何かナルトに似てるな」
「・・・え」
「お前も、アイツも・・・オレを止めない」
―――正直、どう返したらいいかわからなかった。
ナルトに似ていると言われたのは初めてだったし、私とナルトに共通点があるとすれば、それは大切な人が「うちはサスケ」だということだ。
「え、なに?ナルトくんに言ったの?」
「ああ。できれば面倒事は避けたいから、サクラには言ってないけどな」
「ちょっと意外」
ナルトを信用しているということだろうか。
こういう展開になるとは予想外だった。
「・・・もういいや。じゃあね、サスケ。最後に会えてよかった」
そう言って、出ていこうとすると、スイレンが人型になっていた。
「・・・スイレン?」
『ごめん、僕、まだコイツと話したいことがあって。先に出といてくれる?』
「うん。わかった」
スイレンが私を待たせることなんて、滅多にない。
サスケと話したいことというのは、私に聞かれたくない話なんだろう。
「そこらへん、ブラブラしておくね。終わったら、適当に見つけて」
バイバイ、と手をふる。
サスケはいつものように片手をあげるだけだった。