第27章 「オレにとって」
『気配をうまく消しているようだけど、僕は気づくよ。・・・面倒なことしてくれるなあ』
「スイレン、ここはひとつよろしくね」
『わかってるよ。じゃあ、あそこの森に入ったらすぐ撒くからね』
「うんうん。よろしく」
はたから見れば、私はオオカミと話している、ちょっと頭がアレな女の子に見えたりするのだろうか。
スイレンは私を乗せたままゆっくりとした足取りで森の中へ入って行く。
『行くよ。掴まってね?』
「うん」
すると、スイレンはぐっと足に力を入れ、地面を蹴ったかと思うと―――半端じゃない強さの風を体に感じた。
結論から言うと、一気にすごい距離を移動した。
「・・・スイレン、今、何が起こったのか・・・説明してもらえる?」
状況が全くつかめていない私の髪はボサボサ。
スイレンは上機嫌に『よし、完璧』とドヤ顔をしていた。
「ねえ、今、跳んだの?」
『正解。もう男たちは追いかけてこないよ』
死ぬかと思った、というのは心の中にしまっておいて、代わりに「ありがとう」とお礼を言った。
―――その十日後。
ナルトが木ノ葉の里に戻ってきた。
無事、綱手を連れて帰ってきた。
「いやー、大変だったってばよォ!おいサスケ!サクラちゃんに何かしてないだろーな!?」
「してねーよ、このウスラトンカチ!ろくなこと考えねーな」
「ナルト、おかえり!変なこと考えてないで、修行頑張りなさい?私とサスケくん、強くなったのよ?―――ね、サスケくん」
「・・・ああ。ちんたらしてっと、置いてくぞ」
あれからクロは木ノ葉には来ていない。
最初は来ることを期待して待っていたものの、期待するだけ無駄だと思い始めて二人で修行を始めた。
意外にもそれを言い出したのはサスケの方からだった。
サスケとしては、チームワークを深めるいい機会になると思ったのだが、もちろんサクラが断るわけもなく。
サクラも、最初こそサスケを意識していたものの、途中から真面目に取り組むようになっていた。
「へえ、あの人が綱手さまかあ。よかった・・・これでリーさんは大丈夫ね」
「ああ」
綱手を無事連れ帰ったことで、火影の席は無事埋まり、里は安堵に包まれた。