第26章 つじつま合わせ
「なにもくれとは言ってません。今、この場で数分お貸し頂けたらそれで十分です」
「・・・」
「ぶっちゃけた話、その太刀をもう一本作って、あなた方の墓に置いておくつもりですよ」
「お前、」
「いや、墓といっても中身はありませんし、あくまで形だけ。あなた方は死んだことにします」
そこまで言って私の考えていることが分かったのか、白が呟くように言った。
「・・・つまり、ボクたちを死んだように見せかけ、その証に再不斬さんの太刀が必要だと?」
白の言葉に私は深く頷く。
「そうです。ということで、わかりましたか?再不斬」
「・・・言い方がまわりくどい」
「ハハ、そうでしたかね」
「その太刀、貸してもらえますか」と、今度はゆっくりと言うと、再不斬は少し考える素振りを見せたあと、乱暴に私に向けて太刀を投げた。
「っと・・・危ないなあ」
再不斬は「フン」と鼻を鳴らし、その場にドカッと座り込む。
「貸してくれるんですか?」
「・・・好きにしろ」
「ご厚意、感謝します」
そう言って腕の中の「首切り包丁」を地面に置き、まじまじと見つめる。
鬼鮫は近くの木に腰かけていた。
チラリと様子を窺うと「いいですよ」という風に頷いてくれていた。
「どうしようか・・・土遁なら型取りはできるよね」
ボソボソと呟いていると、スイレンが匂いを嗅ぎだした。
「スイレン?何か気になるものでも?あっ、もしかして、これ複製できるの?なーんちゃって・・・」
『うん、できるよ』
「へえ・・・って、え!?」
『できると思う』
そう言って、いきなりスイレンが人型になる。
私以外の三人は驚いたようで、警戒態勢に入ったが、私が慌てて弁解すると何とか落ち着いてくれた。
スイレンはそれを気にする風でもなく、軽々と片手で太刀を持ち上げた。
(えっ、重たくないの)
そう思ったが、黙って見守ることにした。
『うーん・・・どうかなあ』
「いけそう?」
『たぶん』
スイレンはそう言うと、空いている片方の手を伸ばす。
そして、何かを握りしめるような動作をしたあと、太刀と自身の手を見比べた。
スイレンは一つ息をはき、表情を変えることなく何かを始めた―――。