第26章 つじつま合わせ
―――と思えば、鮫肌をしまう。
行動の意味がわからなくて首をかしげていると、後ろに気配を感じた。
ふり返れば、懐かしい姿。
「―――白さん!」
「お久しぶりです、ハルさん・・・でいいですか?」
「はい、ハルで合ってます」
一瞬、私のことを忘れられたのかと思ったが、「クロ」と名乗っていたことを思いだし、白の気遣いに感謝した。
「久しぶりじゃないですか、再不斬。腕は落ちていないでしょうね」
「んだァ、テメェか。なんなら確かめてみるか?」
久しぶりの再会だというのに火花を散らす二人。
そこに「まあまあ」と仲裁に入ると、再不斬は不機嫌そうに、鬼鮫は口角を上げたままそれぞれの愛刀をおさめた。
「で・・・なぜお前らがここにいる?今さら何か用か?」
再不斬は怪訝そうに眉をひそめる。
その隣に白が移動し、鬼鮫のことを警戒しているのかじっと見つめている。
「いえ、つじつま合わせです。白さん、鬼鮫さんは大丈夫ですよ。ちょっと危ない面もありますが、白さんに危害を与えないことは私が保証します。怖い顔してるかもしれないけど、結構優しいんです」
「・・・ハルさん、そんな風に私のこと思ってたんですか」
「・・・冗談ですってば」
ハハと笑い声をあげるが、再不斬の表情はあいかわらずだった。
「・・・つじつま合わせ、だと?」
「はい。こちらにもちょっと事情があってですね・・・その太刀、私に貸してくれます?」
「・・・なんだと?」
再不斬の眉間のしわがさらに濃くなっていく。
視界の端に、鬼鮫のギョッとした表情で私を見ているのが映ったが気にしない。
「だめですか?」
「理由がないことにはできない」
「・・・じゃあ、死ぬのとその太刀を渡すの、どっちがいいですか?」
そう言うと、その場の空気が凍りついた。
と同時に三人の目が見開かれる。
「おい、ガキ・・・どういうつもりだ?」
「どうもこうもありません。そのままです」
にっこりと笑顔を浮かべると、スイレンの『ハル、こわーい』といったふざけたような言葉が聞こえた。