第26章 つじつま合わせ
「・・・実は、明日再不斬のところに行こうかと考えているんですが」
「ほう・・・再不斬のところへ?なぜ?」
「つじつま合わせみたいなものですかね。で・・・いや、まあ、鬼鮫さんと再不斬って仲良さそうなんで、一応聞いてみただけです」
鬼鮫は考える素振りを見せる。
その間にスイレンに「いっしょに行く?」と聞けば、『行く!行く行く!』と元気に返してくれた。
「あ、忘れてもらって構いません。それじゃあ私、イタチ兄さんのところに戻るので」
そう言って立ち上がったと同時に鬼鮫の声が聞こえた。
「行きましょう」
「えっ?」
「私も行くと言ったんです。明日、十一時にここを出ますよ」
「へっ・・・?」と呆気にとられていると鬼鮫が私の横を通り過ぎる。
(・・・やっぱり言うんじゃなかったかなあ)
明日は起きれるかどうか心配だ。
「・・・イタチ兄さんに起こしてもらおうかなあ」
そう考えたが低血圧だったことを思いだし、スイレンに「間に合うように起こして」と頼んだ。
「―――おはようございます、ハルさん」
「・・・っす・・・」
半分寝かけているのは誰が見ても一目瞭然だ。
スイレンの背中に体を預けているハルの後ろから、低血圧のイタチがついてきていた。
「おや、イタチさん。早いじゃないですか、めずらしい」
「まあな・・・」
そう言ってスイレンの背中からハルを抱き上げる。
「鬼鮫」
「はい」
「今日はハルを頼む。昨日の晩から『遅刻できない』ってずっと言ってるんだ」
「ハハ・・・別にそんなに早い時間にしたつもりはないのですがね」
イタチはハルの頭を撫でる。
「・・・イタチさん、今日は寝不足ですか?」
「・・・」
「昨日のあの子の首、絞めたのが原因ですか?」
イタチは答えない。
その沈黙を肯定と受け取ったらしい鬼鮫は、ため息とともに「まあ、」と続けた。
「無理ありませんね。あの子、ハルさんと同じ背丈くらいでしたもんね」
―――ハルさんとかぶったんでしょう?
鬼鮫は胸の内で呟く。
―――かくいう私もあなたと同じですがね。