第25章 敵として
「その点では・・・家族がいない境遇が同じナルトとも違うかもね」
私だって、今でも鮮明に覚えている。
イタチの涙、母の涙混じりの最期の表情、父のめずらしく微笑んだ顔―――すべて。
「わかるよ、サスケの気持ち。だって、私も同じだから」
「は・・・?」
「私も、家族・・・殺されたの。一族ごとね」
―――ごめんなさい。生きててごめんなさい。
どうして自分だけ生き延びてしまったのだろうか、そう思ったことがないわけではない。
でも、それを口にしてしまえば、私とサスケを助けるために「同胞殺し」の汚名を被ったイタチの優しさを踏みにじってしまう。
私は、イタチの―――隠された兄の名誉を守りたい。
そして、生き延びた意味も、自分の存在意味も、理解しているつもりだ。
「でもね、恨んではないの。真実を知ったからね。本当のことっていうのは大体隠されてるの」
「・・・」
「それを見つけるにはかなりの時間が必要だけど・・・ラッキーなことに、私はその“かなりの時間”があったからね」
サスケは何も言わない。
あたりを沈黙が包んで、風が髪をさらっていく。
そして、その沈黙を破ったのはサスケだった。
「オレには・・・必要のないことだ」
「そう?それなら、それでもいいよ。でもね・・・」
サスケの手を握る。
「もし、サスケが隠された真実を知る気になったら、私は手伝ってあげる。前に、言ったの覚えてる?・・・“私、サスケのこと大好きだよ。恋愛感情抜きで”」
「・・・」
「だからさ・・・今言ったこと、頭の片隅にでも置いといてよ」
サスケが真実を知ったとき、きっと私のことも気づくのだろう。
それなら、それでいい。
「サスケは優しい子だからね。私、知ってるよ!私はいつでもサスケの味方だからね」
そう言えばサスケは私を見て「・・・変なヤツ」と小さく笑った。