第25章 敵として
サスケの背を見送りながら、私は隠れて見ていた人物の後ろにまわり込んだ。
「ここは、女湯じゃないですよ―――自来也さま」
自来也はバツが悪そうに頬をポリポリと掻いた。
「そんなに私たちの話が聞きたかったんですか?」
「いやあ・・・その、聞こうと思って聞いたわけでは」
「下手なウソですね。まあ、聞かれて困る話ではありませんし、言いふらしたりしても構いませんよ」
「・・・ずいぶんとワシに対して辛辣じゃのう。アイツには優しかったくせに」
「まあ、大人ほど信じられないものはありませんからね。子どもは純粋で、まだ無知ですから」
「そういうお前も、まだ子どもじゃないのか?」
「まあ、私は別なんですよ」
この自来也はおそらく分身。
私たちのあとをつけて来たのだろう。
「あ、私の首、痕ついてます?」
私がそう言うと、自来也は一瞬呆けた顔をしたが、何のことか察したようで私の首元を見た。
「・・・いや、ない」
「ならよかった。あ、ナルトくんとサスケにはこのこと言わないでもらえますか?あと、木ノ葉に報告するのは『対応にあたったのはあなただけだと』」
「・・・」
「だめですか?」
「・・・いや、わかった」
「それじゃ、失礼しますね」
自来也が頷くのを確認すると、私はその場を去った。
―――アジトへ戻る頃には、もう日が傾いていた。
「おう、ハルじゃねえか」
「飛段さん・・・今からどこか行くんですか?」
「任務だ」
もう一つの声が聞こえてきたので振り返ると、角都がいた。
どうやら不死身コンビはこれから任務地へ向かうらしい。
「任務?何するんですか?」
「そりゃあ、賞金首をだな・・・」
「行くぞ、飛段」
「あっ、ちょっと待てよ角都!」
慌ただしく角都のあとを追いかける飛段。
そんな二人に後ろから声を掛けた。
「あの!」
「あ?なんだ?」
「・・・いって、らっしゃい・・・できれば、早く帰ってきてください」
最後は消え入りそうな声だったが、二人にはちゃんと聞こえたようで、「おう!」と返事をしてくれた。
『敵として』
“憎しみの裏”