第25章 敵として
サスケは続ける。
「前にも言ったが、オレは復讐者だ。アイツを殺し、一族の仇を討つ。アイツが木ノ葉に来たと聞いたとき・・・」
サスケの中にあった憎しみが膨れ上がった。
それとともに、脳裡には、むせ返る血の匂いと倒れた死体、妹の力の入っていない体―――。
サスケはあいかわらず私を見なかった。
「オレは改めて、自分が復讐者だと自覚した」
「・・・復讐って、殺すの?」
「ああ、必ず殺す」
「・・・それで、どうするの?」
「あ?」
「復讐して、その人を殺して・・・どうするの?」
「・・・わからない」
「サスケって、一族全員殺されたんだった・・・よね?」
「ああ」
「・・・家族も?」
サスケは静かに頷いた。
サスケの傷をえぐっているのは分かっている。
だけど、私は知らないふりをして聞いた。
「・・・真実を知る気はない?」
「・・・真実、だと?」
サスケは目を開けて眉を寄せた。
「知ってる?記憶って、事実より感情が揺さぶられた方が強く記憶に残るんだって。ねえ、サスケ。私の言いたいことわかる・・・?」
「・・・オレが、知らないと?」
「その通り」
「真実なんて、知る必要もない。それに、何も知らないお前に言われる筋合いもない!」
サスケは冷たく言い放つ。
偉そうなことを言っているのは分かっている。
「わかってる。私は・・・何も知らない。だけど、これは私の経験から言えることなんだけどね・・・」
「ああ?」
「・・・知らないことは悪くない。むしろ、知らないことの方が多いけど・・・―――知らないことは、愚かだと思う」
そう言うと、サスケは起き上がって真正面から私を見据えた。
「愚か、だと・・・?アイツは一族を、家族を、妹でさえ・・・殺したんだぞ!?それが事実だ・・・真実だ!!お前は知らないからそんなことが言えるんだ!!失う苦しさを―――悲しさを!!」
「・・・サスケ・・・」
「思い出があるからこそ、辛いんだ・・・ほかに・・・何があるってんだ・・・」
サスケは前髪をくしゃりと掴んで言った。
その表情は、苦悩に満ちていた。
「そうだね。何もないより、思い出があるからこそ・・・その人とふれ合った時間があって、その人の優しさにふれたときがあるから・・・余計につらい」