第25章 敵として
コンコン、とドアがノックされる。
「ん?・・・誰だってばよ」
そう言ってドアに視線を向けたナルトに声を掛ける。
「ナルトくん」
「ん?」
「今から、私の言う通りにしてほしいの」
またコンコンとノックされ、それが何度か続く。
ナルトはそれに反応し、チラリと目線をドアにやるが、私がナルトの頬を手で包み、無理やりこちらを向かせる。
「く、クロ・・・?」
「いい?ナルトくん、約束して。私の言うこと聞いてくれる?」
ナルトはいつもと違う私に気付いたのか、戸惑ったように私の目を見つめ返した。
そして、ぎこちなく頷いた。
「ありがとう。じゃあ、これから―――」
―――ガチャリ、と音をたててドアがゆっくりと開く。
ドアの外にいたのは、イタチと鬼鮫だった。
「へえ、この子が例の子ですか・・・」
鬼鮫は口角を上げたまま、ナルトを見る。
(・・・自来也が来るまでの辛抱だ。大丈夫・・・なはず)
実はこのナルトは、分身の私が変化したものだ。
出した分身は全部で二人。
一人は今隣にいて、もう一人は本物のナルトと一緒に外へ逃がした。
「ん?この子は・・・」
そして、横にいる私に気が付いたのか、私を見る。
目が合ったとき、思わず目を逸らしたくなった。
「・・・どうします、イタチさん」
「さあな。邪魔なら消せ」
見たことのないくらい冷たい目をしたイタチが、私を見おろす。
(アジトにいる時とは全然違う・・・)
イタチも鬼鮫も、私と話しているときは優しい表情だ。
緊張とは違う意味で、心臓がうるさい。
(・・・分かっていたことだけど・・・)
「オレたちが用があるのは・・・ナルトくん、君だ。君を連れて帰ることが、我が組織から下された至上命令・・・」
イタチがそう言った途端、私はナルトに変化している私の手を引いて走り出した。
「・・・鬼鮫」
「分かっていますよ」
―――が、一瞬で目の前には、鬼鮫がいた。
「ッ・・・」
(やっぱり、簡単にはいかないか・・・)
「フフ、逃げるつもりですか?すみませんが、こちらとて君を逃がす気はありませんよ」
「・・・無駄な抵抗はしない方がお互いのためだ」
(でも、ナルトをできるだけ遠くに・・・!)