第25章 敵として
そして、何個か旅館を見て回っていると、ようやくナルトを見つけた。
(やっぱりスイレンがいないと人一人見つけるのも大変だ・・・)
スイレンなら匂いで見つけることができるのだろうが、生憎私にそんな機能は備わっていない。
改めてスイレンのありがたみを実感したところで、驚いている様子のナルトに声を掛ける。
「久しぶり、ナルトくん」
「クロ!?お前、何でここに・・・?」
「ちょっとね。まあ、ナルトくんに会いに来たんだけど」
「え・・・?」
「まあまあ、細かいことは気にせずにさ。ちょっと話そうよ」
そう言ってやや強引に部屋へと入る。
そして、背後で扉が閉まったことを確認すると、小さくため息をついた。
(・・・あと、もう少しで・・・)
「クロ?どうしたんだ?」
「あ・・・いや、何でもないよ。あ、そうだ!自来也さまは?」
「そうだ、それがさー・・・聞いてくれよ、エロ仙人ってば、ちょーっと美人の姉ちゃんに誘われたからってどっか行っちまったんだぜ?ありえねー!!」
「へえ・・・美人だったんだ」
「おう!そりゃもう、ボンキュッボンだってばよ!」
(ここは原作といっしょなのか・・・まあ、自来也がキレイなお姉さんの誘惑に勝てるわけないか)
そこでふと、全く関係ないことを考える。
(・・・もしかして、そのボンキュッボンのお姉さんは、イタチ兄さんに声を掛けて・・・逆に操られたってことか?)
(いや、だってカッコいいのは確かだし・・・―――いや、だめだ。“これから戦うんだ”)
―――今の私は“クロ”。
ハルじゃない。
(うまく、騙されてほしいな)
「クロ?・・・なんか今日のクロ、変だってばよ」
「え・・・そう?」
いつものことながら、緊張している。
相手が相手だから尚更だ。
「・・・だとしたら、私の弱さが、ナルトくんに見えてるのかな」
「・・・弱さ?」
「うん。ま、気にしないでよ。それより、ナルトくんはこれから起こることに覚悟しておいた方がいいと思うよ」
ナルトは意味が分からないようで、首をかしげている。
私は、近づいてくる二つの気配に苦笑いをした。