第24章 中忍試験 3
三代目のもとを去っても、私は会場へは入らなかった。
会場付近の建物の上にいた。
これなら歓声くらいは聞こえる。
『ハル・・・』
「スイレン、今は“クロ”だって言ってるでしょ」
『ごめん・・・でも・・・』
「スイレン、なーに暗い顔してんの。ブサイクになるよ?」
『ひどい!って、そうじゃなくって・・・』
スイレンは何か言いたげに口ごもる。
おおかた、さっきの話の内容についてだろう。
「言いたいことは大体分かってるよ。どーせスイレンのことだから『なんでそんなこと言うの』とか言いたいんでしょ?」
『・・・』
「図星?スイレンの考えてることは分かりやすいから、当てるの簡単だよ」
『僕は、キミがいつ死ぬかハラハラして仕方ないんだ!自己修復があるからいいものの、もうちょっと自分の体大切にしないと・・・』
「・・・ありがとう。スイレンは優しいね。でも、せっかく“自己修復”機能があるんだもの。使えるとこで使わなきゃ、損でしょ」
『キミって子は・・・』
「・・・ごめんけど、巻き込むよ、アンタのこと」
『うん!そのほうが嬉しいよ』
「“最後”まで付き合ってね?・・・頼りにしてる」
(“最後”・・・私が死ぬとき・・・かな)
「でも、今回は何もしない。ただ・・・ことの成り行きを見守るだけだから」
『・・・僕は、キミが言うなら、なんだってする。だから・・・一人で抱え込まないでね』
「・・・ありがと。その言葉、嬉しいから一生覚えておくね」
そう言えば、スイレンは寂しそうに笑った。
ふと、会場がワアッと騒がしくなる。
『あ・・・始まったみたいだね』
「そうだね・・・」
私たちは何もせず、ただ観客の声を聴く。
「耳の訓練でもする?」
『ハハ、それもいいかもしれない』
「事が起こるまで結構時間があるから。スイレンはどこか行っててもいいよ」
『冗談。今日はキミのそばから離れないことに決めてるんだ』
「・・・そう」
(私は、そんな風に言われるほど心配をかけてるんだな)
「ごめん・・・ありがと」