第24章 中忍試験 3
「なに・・・お前が気にすることではない。お前がそのことを知っていて、今のように忠告してくれたとしても・・・わしはあやつと戦うことを選ぶ。それがわしの最後の役目・・・そう思っているからの」
「・・・そう、ですよね」
「そう暗い顔をするな。ただの老いぼれが死ぬだけじゃ。お前がそのような顔をする必要はない」
私が何も返せないでいると、三代目は遠い目をして言った。
「わしの方こそ・・・謝らねばならん」
「お前の家族を奪い、あげく、里からも追い出してしまった・・・兄を犯罪者に仕立て上げ・・・」
「許してくれとは・・・到底言えん。恨んでもいい。当然のことじゃと思っとる」
「わしの・・・最後の罪じゃ」
―――全部、本当のことだった。
だからこそ、何も言えなかった。
でも―――。
「私は、三代目様のこと・・・たぶん、一生許せないと思います。家族は死んだ・・・兄も犯罪者になってしまった。一人、残された下の兄は、復讐に命を懸けている。それは、すべて・・・三代目様の平和を愛するがゆえの甘さです」
「・・・」
「でも。・・・でも、私はそんな三代目様だからこそ、感謝しています。前にも言った通り、恨んでません。・・・今、私がここにいるのも、三代目様のおかげです」
「・・・そうか」
「そりゃあ、暗い顔だってしますよ・・・三代目様は、私の・・・―――大切な人、なんです」
涙は出なかった。
ただ、今は、心が泣いている気がした。
「そうか。嬉しいな・・・」
「?」
「わしは・・・お前の“大切な人”・・・か」
三代目は今までの重たい空気を払うように豪快に笑った。
そして、笑い終えたあと、ふいにどこか寂しそうな顔をして言った。
「・・・お前は一生影を背負っていくのか」
「え・・・?」
三代目はそれ以上何も言わなかった。
「・・・私は、自分がそんなものを背負っているとは思っていません」
「・・・そうか」
「でも・・・もし、私がそれを背負っているというのなら・・・」
「・・・いえ、せめて兄たちの分まで私が背負えたらいいんですけどね」
―――それなら、傲慢ではないでしょう?
そのとき、私がどんな顔をしていたのかは分からない。
「失礼します」と一言言い置いて、私はその場を去った。