第24章 中忍試験 3
「それで?ほかにも何かあるんじゃないですか?」
そう促すように聞けば、カカシは「そうだね」と答えた。
「年齢、住所、出身、家族構成・・・これらはまったく分からなかった。調べても調べても、何も出てこなくてね。オレもびっくりしちゃった」
「・・・年齢なら、カカシさんより年上ですよ?」
「・・・真顔でそういうこと言うのやめて?」
「いえ、本気ですけど」
そう言えば、カカシは「困ったな・・・」と頬をかく。
膝の上にいるスイレンはすっかりおとなしくなり、事の成り行きを見守っているようだった。
「聞いたら教えてくれる?」
「いやですね」
「だよねー。一筋縄でいってたらオレも苦労しない」
(カカシともあろう人がなぜ私にこんなことを聞く?)
探るような目でカカシを見るが、何を考えているのかさっぱり分からない。
「で・・・話を戻すけど、要はね、お前は何者かってことが聞きたいの」
「・・・はあ」
「答えてくれる?・・・返答次第では、帰すか帰さないかが決まってくるけど」
「・・・いいですね、それ。十年後の私に言ってほしいなあ」
ふざけたように返せば、スイレンがくすくすと笑った。
「そうですね。もしかしたら・・・私は敵国のスパイかもしれないし、どこかの国のお姫様かもしれない」
「大蛇丸の手下かもしれないし・・・ここに遊びに来ただけの人間かもしれない」
「もしかしたら・・・復讐者で・・・誰かを殺しに来た―――とかね」
最後の言葉を聞いた途端、カカシの目つきが鋭くなった。
「やだ、冗談ですよ?・・・でも、可能性は無きにしもあらずってとこでしょ。誰だって、いつどうなるかなんて分からないんだから」
「・・・そんな物騒なウソつかなくったっていいじゃないの」
「ウソだって分かってるなら、そんな怖い顔しないでくださいよ」
「・・・波の国での一件で、オレはお前を子どもとは思ってない。できれば、正直に答えて欲しいんだが」
「正直は必ずしも美徳とは限らない・・・人間ってのはウソをついて生きていくものだと思いませんか?」
耳に痛いほどの沈黙と、表面上だけ穏やかな睨み合い。
お互いに目を逸らさず、口元には笑みを浮かべている。
腹の内では何を考えているのやら。