第22章 中忍試験 2
「・・・別にいい。私も蹴っちゃったし」
「ああ。正直、あの蹴りは結構キた」
「・・・そっかー」
そこで会話が途切れた。
相変わらずこちらを見ないサスケ。
―――そんなサスケに、いきなり抱きついた。
そのまま倒れこむ。
「イッ・・・お前、痛ェだろーが!」
私がサスケの上に乗っかっている状況だ。
「あのさ」
「・・・なんだ」
「私、サスケのこと、大好きだよ」
「・・・っはあ!?」
「―――恋愛感情、抜きで」
そう言えば、サスケは「ああ・・・」と落ち着いた声を出した。
ふとスイレンの方を見れば、口が半分開いていた。
「だからさ・・・“オレは復讐者だ”なんて・・・悲しいこと言わないでよ」
絞り出すように言った言葉は、私たちの間に沈黙をもたらした。
少しして、サスケが小さな声で呟いた。
「お前に・・・何が分かるんだよ・・・」
「・・・そうだね。でも、私・・・サスケの傍にいたい。サスケの笑顔が見たい」
まるで恋仲の相手に言うようなセリフだったけど、サスケは何も言わなかった。
「遠くにいかないで・・・」
サスケがイタチへの復讐を自覚するたびに、サスケが遠くにいってしまうような気がする。
(二人は兄弟なのに・・・私とも血が繋がっているのに)
サスケの胸に耳を当て、服をそっと握れば、サスケの心臓の鼓動が聞こえた。
「遠くにいかないで・・・」
そう言ったクロは、それっきり黙ってしまった。
その時、不意にサスケの脳裏によぎったのは、今は亡き家族の姿だった。
“愚かなる弟よ・・・このオレを殺したくば、恨め!憎め!そして醜く生き延びるがいい・・・逃げて逃げて・・・生にしがみつくがいい”
(あの男を殺すまでは・・・死ねない)
そうだ。オレが弱かったから。力が無かったから。
だから、父さんも母さんもハルも―――。
アイツがくれた、新しい力。
でも―――そのせいで、クロまでその犠牲になってしまった。
“だからさ・・・“オレは復讐者だ”なんて・・・悲しいこと言わないでよ”
オレにこんなことを言ってくれるクロに、オレは何も言えなかった。
(どうしたらいいんだ、オレは)
オレは復讐者。
なのに―――。
(時々、自分が分からなくなる・・・)