第21章 中忍試験
―――解答用紙回収時。
森乃イビキは、受験者の最後の一人が教室を出ていくまで見送っていた。
そして、解答用紙を回収していると、一枚の解答用紙が目に入った。
「白紙で第一の試験を通過する奴がいやがるとはな・・・うずまきナルト、か。本当に面白い奴だ」
笑いをこぼしつつ、回収を再開する。
すると、回収を手伝ってくれていた他の試験官が集め終えたらしく、イビキのところに来た。
「イビキさん、残りはもう回収したんで、これで全部です」
「そうか。ご苦労だった」
「はい。というか、今頃の子が考えることは分からないもんですね」
「ああ・・・うずまきナルトか?」
「その子もですけど・・・ほら、その解答用紙の一番上。見てくださいよ」
試験官がイビキの持っている解答用紙を覗きこみながら言った。
「ん・・・?」
途中まで完璧に解答は合っているのに、その先は白紙。
おまけに、うっすらと残っている絵。
イビキは顔をしかめたが、そのあとすぐに思わず笑いが出た。
「おいおい・・・これ、犬のつもりか?」
「っぽいですね。ほら、この子、あそこに座ってた子ですよ」
試験官がある席を指さす。
が、イビキはいまいちピンとこないようだった。
「ほら、イビキさんがいろいろ話してるときに喋った女の子ですよ」
「ああ、あの子か」
イビキの脳裏に他の受験者よりも幼く見えた少女の姿がよぎった。
「アイツの名前・・・“クロ”?これ本名か?」
その疑問に答える者はいない。
イビキは、ふと、少女の膝に乗っていた白いネコを思い出す。
(そういえば・・・あのネコ、やたらとオレを見ていたな・・・)
あまりに見られるものだから、少し興味が湧いてしまった。
イビキのことを見ているときは無表情なのに、たまに少女がネコの頭を撫でると、嬉しそうに目を細めるのだ。
(・・・オレの顔、そんなに怖かったのか?)
「イビキさん?オレらも持ち場に戻りましょうよ」
「あ、ああ。そうだな」
試験官に声を掛けられ、イビキは解答用紙の束を脇に挟み、301号室をあとにした。