第21章 中忍試験
「開始!」
注意事項をいくつか言われたあと、その言葉で全員が一斉に机に向かった。
私もとりあえずペンは持ってみる――が。
(分かんね・・・なんじゃこりゃ)
アカデミーにも通っていなかった私は、予想はしていたが、やっぱり一問も解けなかった。
チラリとサスケを見るが、集中しているのか見向きもしてくれない。
(イタチ兄さん・・・私、ナルトと同じレベルの頭脳だよ・・・つまりバカなんだよ・・・)
仕方ないといえばそうなのだが。
そして、何度目か分からないため息をついたとき、隣のサスケが私の解答用紙を人差し指でトントンと音を鳴らした。
「・・・?」
「お前・・・本当に解けねえのな。つか、なに書いてんだよ」
「え、犬を・・・」
「は?下手過ぎんだろ」
そう言われ、暇潰しに描いた犬の絵を消しゴムで消す。
「おい。お前、オレの見せてやる。早く写せ」
「え」
「いらないなら別にいい」
「いる!ありがとう」
サスケの信じがたいご厚意に甘えて写していると、隣の人が心なしか落ち着きがないことに気が付いた。
(サスケ兄さん、さっき言ったこと本気にしたのかな・・・あれ半分冗談のつもりだったんだけど)
まあ、半分本気だけど。
隣の人を不思議に思ったが、“バレないカンニング”をしていることに気づく。
(なるほどね・・・確かに、これはそういう試験だからね)
そう思った直後、私の解答用紙と隣の人の解答用紙の真ん中に―――クナイが刺さった。
「ゲッ」
思わずそう声をあげてしまったのは私。
(ヤバ・・・失格になっちゃった?)
「お前、三回失敗したぞ」
試験官の無機質な声が響く。
「おい、お前だ」
ドクン、ドクン、と心臓が波打つ。
「―――そこの砂隠れの茶髪」
(えっ)
呼ばれたのは私ではなかった。
そして、ガタンと席を立ったのは、私の隣の人だった。
「クソッ」
彼はそう言ったが、それと同時に向こうの方で席を立つ人がいた。
(セーフ・・・あー、ドキドキした・・・)
「試験官怖ェ・・・」
ふと試験官を見れば、目があってしまった。
一秒後、ニコリと笑顔を向けられ、もはや反射速度で、勢いよく顔をサスケの方に向けた。
(怖っ!)