第21章 中忍試験
―――トイレという口実で暇潰しの探検をしていた私は、ふとこれまでの経緯を思い返していた。
三代目のご厚意で、中忍試験に参加できることになった私。
しかも、第七班に参加できる。
嬉しいことではあるが、正直、微妙な気持ちだ。
(参加できるのは嬉しいけど・・・でも、こんなにサスケに近づくとは思ってなかったな)
近くで見れるのはラッキーだが、ボロが出ないか不安だ。
『ねえ、ハル』
窓から外を眺めている私に、スイレンが声を掛けてきた。
「ん?」
返事をし、声がした方を見る。
オオカミ姿のスイレンは、おすわりをして私を見上げていた。
『あのさ・・・あのジジイの言うこときいて良かったの?』
「あのジジイ?・・・あ、三代目のこと?こら、スイレン、変なこと言っちゃだめよ。あの人はいい人なんだから」
『・・・そういえばお兄さんには何て言ったの?』
三代目をジジイ呼ばわりしたスイレンを軽くたしなめながらも、足はカカシの元へと戻る方に進んでいた。
すると、私の横にスイレンがくる。
『もう戻るの?』
「うん、そろそろね。あと、イタチ兄さんには“遠出してくる”って言っておいた」
『ふぅん。でも、最近その理由で帰ってないことが多いから、お兄さん心配してるんじゃない?』
「まあ・・・ねえ。でも、それしか理由が思いつかないんだもん」
イタチは、この前私が熱を出してから、以前よりも心配するようになった。
心配してもらえるのは嬉しいが、その度に嘘の口実を言って出掛けるのは、何だか心苦しい。
「いつかは、本当のこと言わないとな・・・」
そう呟いたところで、スイレンが言った。
『そろそろ、元いた場所に戻るよ』
「うん。ってことは、あの三人と会うのか・・・ちょっと気まずいかも・・・」
何言われるんだろう、と一人呟く。
(この前の再不斬の件で変化解けちゃったからな・・・)
カカシはもう確信したような感じだし、ナルトたちも気付いているんだろうか。
いや・・・でも、ナルトたちは“ハル”の姿を知らない。
“クロ”として茶髪の少女でしかナルトたちの前には現れていないから、気付かれていないと思うのが妥当かもしれない。
・・・サスケが見ていれば、それはまた別の話しだが。