第19章 それぞれの帰宅
「あれは・・・」
カカシが呟いた。
そこには大勢の人たち。
手には武器を持っている。
そして、その真ん中にはイナリがいた。
「カカシ先生、よく分かんねーけど、多分助けに来てくれたんだ!だって、イナリがいるんだ!」
「イナリくん・・・?」
「―――イナリ!!」
ナルトがイナリの名前を大声で呼ぶと、イナリはナルトの口調を真似たように言った。
「ヘヘッ。ヒーローってのは遅れて登場するもんだからね!」
イナリの表情は、見間違えるほどたくましいものになっていた。
ナルトは歯を出して笑うと、印を結び、影分身を出してイナリたちに加わった。
カカシも残り少ないチャクラを使い、可能な限りの影分身を出した。
カカシには、もう、戦うだけのチャクラは残っていないのでこれはハッタリだ。
すると、それが効いたのか、ガトーの手下たちは数に圧倒されて逃げて行った。
「――なあ、カカシ先生・・・あの面と再不斬は?」
ナルトはふとキョロキョロと辺りを見渡す。
そんなナルトを見ていると、後ろからサスケの声が聞こえた。
「おい、カカシ・・・あの面と再不斬は・・・?」
「サスケ・・・動いて平気なの?あと、二人とも同じこと聞かないでよ」
本当にお前らは息が合うね、と苦笑混じりにそう言うと、サスケは「いいから早く答えろ」と眉を寄せて言った。
そこにタズナの声が掛かった。
「おーい、お前さんたち!ワシの家に戻らんか?話はそこからじゃ」
「あ・・・はい。ありがとうございます」
カカシが返事をし、ナルトの手を借りながらも歩き出そうとすると、サクラの「待って」という言葉が聞こえた。
「どうした?」
「待ってよ。クロがいないわ!私とタズナさんと一緒にいたのに」
「え・・・クロ?クロならオレと一緒にいたけど・・・なんか、いつの間にかいなくなってたってばよ」
「はあ?ナルト、アンタ幻覚でも見たんじゃないの?クロは、アンタが連れてきてからずっと私と一緒にいたのよ?」
分かっているのは、クロが消えたことだけ。
ナルトとサクラの話を聞いていると、まるでクロが二人いたようにも聞こえてくる。
「おい・・・とりあえず戻ろうぜ」
――サスケがそう言わなければ、あと十分はそこから動かなかっただろう。