第19章 それぞれの帰宅
「うん―――・・・風邪ね」
「・・・そうか。で、どうすればいいんだ?」
小南はまるで医者みたいに、私に症状を聞くとそう言った。
そんな小南にイタチが聞くと、小南は「は?」とでも言いたげに眉を寄せた。
「そんなの決まってるじゃない。安静にして、体を冷やさない。とにかく、無理しちゃダメ」
「そうだよな。いや・・・ハルが熱出したのは初めてで・・・」
「そうなの?逆にすごいわね」
そういえばこの世界に来て、私はまだ一度も熱を出したことがなかった。
健康なら一生風邪引かなくて済むかな、とかいつか思った気がするけど、そんなのは甘い考えだって今思い知った。
(風邪か・・・風邪ってこんなにしんどかったっけ・・・)
「じゃあ、また何かあったら呼んで。あ、あと・・・ペインがあなたのこと呼んでいたわ。あとで行きなさい」
「分かった」
そんな会話をして小南が部屋を出て行く。
最後に私に向かって小さく手を振ってくれた。
「イタチ兄さん・・・鬼鮫さんが単独任務中って・・・」
「ああ、それならさっき帰ってきたんだ。そしたらお前が戻ってきてるって言うから・・・」
「そうなんだ。あのさ・・・今さらだけど、ここってイタチ兄さんの部屋?」
「ああ」
「鬼鮫さんが運んでくれたの・・・?」
「ああ」
「そう・・・」
(あとでお礼言わなきゃ・・・)
すると、考えていたことが顔に出ていたのか、イタチが眉を下げて言った。
「そうだな・・・でも、お礼は元気になってからにしよう」
「あは・・・なんで分かったの?」
「なんとなく、かな」
その会話を最後に、私は目を閉じ、眠る体制に入った。
うっすらと消えていく意識のなかで、頭を撫でられた気がした。
久しぶりのその手に、ひどく安心感を覚えた。
(私、頭撫でられるの好きなんだよなあ・・・子供みたいかも・・・)
そう思うと同時に、私は完全に意識を飛ばした。