第19章 それぞれの帰宅
「それじゃあ、行きますよ」
そう言われて私の体は、二回目の浮遊感に包まれた。
いわゆる―――お姫様抱っこ。
「うわっ・・・ええ?」
「行きますよ」じゃねえ。
正直、とても緊張したが、今の私にとっては助かった。
この体のダルさで帰れと言われても、帰れる自信が無い。
「あ、ちょっと待ってください。スイレン、ネネ」
『なに?』
「二人にお願いがあるの。あのね、再不斬と白さんを安全な場所まで案内してほしいの。追手が来なくて、食料も確保できるところ」
そう言うと、スイレンは露骨に嫌そうな声を出した。
だが、「お願い」ともう一度言うと私の顔を見て渋々頷いたようだった。
『・・・分かった。分かったから、キミはもう寝ときなよ。顔色すごいよ。送ったら、すぐ戻るから』
「え・・・そんなにひどいか」
スイレンに言われ、少しだけ笑う。
「じゃあ、頼んだよ。白さん、再不斬、あとはこの子たちが案内してくれるので、この子たちについて行ってください。あと、今度、会いにいきます」
今度こそ言い切って鬼鮫に「お願いします」と頭を下げると、鬼鮫は頷いて、最後に再不斬の方をチラリと見てその場を去った。
「・・・ハル、しんどいか」
手を握られる感覚があり、瞼を上げる。
どうやら寝てしまっていたようだ。
首を動かすと、なんだか喉が痛んだ。
「あれ・・・イタチ兄さん・・・?なんで・・・」
私の手を握っていたのは、何故かイタチだった。
カラカラな喉から出る言葉だったが、イタチの耳には届いていたようだった。
「・・・お前、鬼鮫に抱かれて帰ってきたんだ。熱出して」
「ああ・・・」
私、熱あるのか。
そう理解すれば、この状況は簡単に説明がつく。
(頭痛い、喉痛い、寒い・・・これ風邪か?)
ボーッとしている頭で考えてみるも、途中でめんどくさくなって止める。
イタチは「小南を呼んでくる」と言い、席を立ってしまった。
「あ・・・」
手を伸ばしたけど、掴むあてもなく、結局下ろした。
(熱のときって何だか無性に人肌恋しくなるんだよねー・・・)