第19章 それぞれの帰宅
「お前、コイツと知り合いだったのか」
再不斬の言葉に頷いて見せると、再不斬は不機嫌そうに貧乏ゆすりをした。
「ちょ、ちょっと・・・何でそんなにイライラしてるの」
「あなたが気にすることじゃありませんよ。ただ、先ほど一悶着ありましてね。ったく、相変わらず気の短い男です」
「・・・そう言うテメェは相変わらず嫌味なヤローだな」
どうやら同じ忍刀七人衆の二人でも仲は良くないらしい。
困り顔になっている白を見て、少し苦笑いしてしまった。
「―――それじゃあそろそろ帰りますよ、ハルさん」
不意に鬼鮫がそう言った。
一瞬何のことかと思ったが、鬼鮫は私を探したと言っていたことを思い出した。
返事をして立とうとする。
すると、白が私を気遣うように支えてくれようとしたようだったが、私は笑顔でそれを断った。
(だって、鬼鮫には迷惑かけたくないし・・・それに白にも悪いから)
そう思った矢先のことだった。
「・・・無理しちゃダメですよ。あなたは熱があるんですから・・・」
「―――え?」
「・・・白さん・・・あなたって人は・・・」
白が私のことを思って言ってくれたのは分かっている。
・・・それは言わないでよかったよ、白。
だが、当然鬼鮫の耳にも届いているはずで、鬼鮫はその言葉をもう一度繰り返した。
「・・・あなた、熱あるんですか?」
「いや、あるって言っても微熱・・・」
「微熱じゃないですよ。さっきまでグッタリしてたじゃないですか」
「・・・白さん」
・・・だから言わなくていいよって。
「分かりました」
ため息をつきながら急に鬼鮫が言った。
そして―――脱ぎ始めた。
「え、何脱いで、」
その場にいた全員が目を点にした。
「・・・別に裸になるわけじゃありませんよ。ほら、これ着てください。これで少しは寒くなくなるんじゃないですか」
私に向けて脱いだものをズイ、と渡す。
見れば、それは暁の象徴でもある、あの服だった。
「え・・・あ、ありがとうございます」
おそるおそる服を頭からかぶる。
大きくて下の裾の部分が地面についてしまって申し訳なかった。