第19章 それぞれの帰宅
再不斬が驚くのも無理はなかった。
「まさかこんなところで再会するとは思ってませんでしたよ。ここで会ったのも何かの縁―――・・・と言っておきたいところですが、何しろ私には用がありましてね」
「・・・何故お前がここにいる?―――鬼鮫」
再不斬の目の前にいるのは、かつて再不斬と同じ“忍刀七人衆”だった干柿鬼鮫。
再不斬の顔見知りでもある彼は、確か里を抜けたはずだ。
S級犯罪者となって。
「ですから、用があると」
「・・・用?」
再度、鬼鮫が言ってみせると再不斬は理解できないように眉を寄せた。
「彼女を返していただきたくてね」
「・・・彼女?まさか、」
鬼鮫の視線の先には白―――ではなく、横たわっているハル。
再不斬が振り返ると、二人の女の姿はなく、フクロウと白いオオカミが代わりにいた。
「いやあ、探しましたよ・・・やっと見つけたと思ったらこんなところにいたとは・・・」
「・・・・・・」
「彼女を渡してもらえますか?その子がいないとウチは大変なんですよ。特に、私とコンビを組んでいる人がもう限界で」
「・・・ハッ、オレには関係ねえよ」
「渡す気はありませんか?」
「ああ。こっちも事情があるんでな―――白!そのガキを頼んだぞ!」
「っはい!」
「ほう・・・」
正直、再不斬には鬼鮫が言っている意味がさっぱり分からなかった。
むしろ、ハルについての疑念が深まるだけだったが―――。
「あのガキには借りがあるんでな」
「そうですか。仕方ありませんね・・・あなたほどの追い忍なら少しは金をもらえるでしょう」
「オレの首取って金稼ぐってか?テメェは昔っから気に食わなかったんだ」
首切り包丁を構えると同時に再不斬の口角が上がる。
鬼鮫も相変わらずの調子で鮫肌を片手に持った。
「行きますよ、再不斬!!」
鬼鮫のその一言が合図のように、お互い勢いよく走り出した。