第18章 イナリの叫び
それを見届けると、急に胸の傷が痛み始めてきた。
「・・・おい。ガキ・・・一体なんのつもりだ・・・?白をどこにやった・・・!?」
「え・・・?ああ・・・」
「おい、聞いてんのか―――・・・おい?」
結構動いたせいで、まだ治りきってなかった傷が開いたのかもしれない。
力が入らなくて、地面に膝をつく。
息をするたびに少しずつ痛みが増していく。
「す・・・スイレン・・・」
名前を呼ぶと『バカ!』という二つの声がした。
スイレンとネネの声だ。
人型のスイレンとネネの表情は何だか怒っているように見えた。
『もう!何してるの!?』
「あれ?ネネ・・・アンタ、白は・・・」
『あの子なら今向こうで寝とる』
「そうなんだ」と返事をする前に不意に浮遊感が私の体を包んだ。
「え・・・?」
いわゆるお姫様抱っこというもの。
『ちょっとアンタ、動ける?まあええわ。連れてくで?』
「おい、お前ら―――」
そのまま状況も理解できず、スイレンは私を、ネネは再不斬を抱きかかえその場を離れた。
スイレンたちが連れてきてくれたところは、大きな木の上だった。
「ありがとう、スイレン。もう・・・大丈夫だから」
そう言うとスイレンは下ろしてくれた。
ネネに抱きかかえられていた再不斬だが、再不斬もケガをしていて抵抗するだけの気力が残っていないらしい。
すると一つの声が聞こえた。
「再不斬さん!大丈夫ですか!?あなたたち再不斬さんに何を・・・!」
「白・・・お前、」
「私のこと、分かりませんか・・・」
再不斬が目を見開き白を見る。
私は、そういえば、今は元の姿に戻っていたことを思い出す。
「クロです。分かりますか?白さん、作戦のこと忘れていたんですか?まあ、ごめんなさい。だから少し強引に意識を奪ってしまったんですけど・・・」
「クロさん?でも、姿が」
「これは・・・気にしないでください。それより、再不斬・・・手を出してください」
イタイところを突かれ誤魔化す。
話を変えるように再不斬に話しかける。
だが、再不斬は私のことを警戒しているようでなかなか手を出そうとしない。
「再不斬さん、大丈夫です。この人は敵じゃありません」
白がそう言うと再不斬はゆっくり手を出した。