第18章 イナリの叫び
「何をするつもりだ・・・?」
再不斬の問いには答えず両手を握る。
「おい―――」
『ちょっ、ちょっとキミ何してるの!?自分の回復もまだ終わってないのに、他人の傷を治すなんて、なに考えてるの!?』
「いいの、スイレン・・・私はあとからでもできるから」
スイレンにそう返すと、スイレンは納得できないように不満の声をあげた。
だが、止める気はさらさらなく、スイレンに謝りながらも再不斬の手を握り続けた。
「―――・・・はい、終わったよ。ごめんね、少し時間が掛かっちゃって」
今回はいつもより時間がかかってしまった。
多分、私もケガをしているからだろう。
手を離せば、再不斬は驚いたように自分の手を見つめた。
「白さんも・・・」
「ああ、ボクは大丈夫ですよ。ケガをしたと言っても再不斬さんほどではありません」
「そうですか」
遠慮したように言う白に少しだけ笑って返すと、不意に、体の力が抜けてその場に倒れてしまった。
(あ、あれ・・・?)
『ハル!!もう、無茶するから!!』
「クロさん!大丈夫ですか!?」
(ハルって呼ばれるの久しぶり・・・)
頭のなかでそんなことを思っていると、不意に再不斬が私のお腹とおでこを触った。
「いっ・・・何すんのよ・・・」
「腹の傷・・・と、熱もある」
『え?熱・・・?』
「お前、オレの手を治すより前に自分のことをしろ」
再不斬の言葉に目をそらす。
すると、スイレンが私の胸の傷に手をあててきた。
「スイレン・・・?」
『今から僕が治すから!』
「ああ・・・ごめん」
私が謝るとスイレンは『別にいいよ』と少し怒ったように言った。
そのあとネネが私に話しかけてきた。
『なあ、ハル』
「ん?」
『あの・・・アンタの髪飾り、一応拾ってきといた』
「っ本当―――」
『動かないで』
「・・・ごめん。ネネ、ありがとう」
そう言うとネネは眉を下げて笑った。
「ハア・・・」
大きく息を吐き、目を閉じる。
『・・・ハル?いいよ、寝てて』
「うん・・・」
疲労か、それとも熱のせいか、急にダルくなってきた。
ありがとう、とスイレンに言う前に私の意識はプツンとそこで途絶えた。
『イナリの叫び』
“血継限界の呪いと幸せ”