第17章 波の国の悲しさ。
「それで、作戦なんですけど・・・いいですか?」
「はい」
「さっきの男の子ともう一人の男の子と白さんが近々戦うことになるんですど・・・その時に、」
「ちょっ・・・ちょっと待ってください」
「はい・・・?」
「どうして・・・そんなこと分かるんですか」
白は少しだけ眉を寄せて、怪訝そうに聞いてきた。
「え・・・」
・・・そりゃそうだ。
「だって・・・近々ってなんですか?そもそもキミ何歳ですか?あの子と戦うのだって・・・」
・・・ハイ。
正直、その言葉しか出てこなかった。
「す、すみません・・・あの、十歳です」
「・・・多分」と付け足し、もう最後の方は声が小さくなっていた。
「いや、その・・・近々っていうのは、その・・・ごめんなさい、いつか忘れちゃって。もしかしたら明日かもしれないし明後日かもしれない・・・」
「そういうことではなくてですね・・・」
焦ったように言う私に対し、白は困ったようにため息をついて髪を耳に掛けた。
記憶力は自信があったはずなのに、と少し落ち込んでいると、白が急にクスッと小さく笑った。
(・・・これで男なの?)
「綺麗」という一言しか当てはまらなかった。
いや、もう私どうしたら。
女として負けてる気がしてきた。
「フフッ、ああ、ごめんなさい。キミがそんな人だとは思ってなくて。この前会った時とは全然違いますね」
「・・・今日、ちょっと遅刻してしまって。二人が会うこと分かってたのにすっかり忘れてて・・・」
「・・・キミは未来でも見えるんですか?」
白のその質問は半分冗談で半分本気だった。
私はそれに気づくことなく、何でもないように「いや、そんなわけないですよ」と笑って言った。
嘘じゃない。
未来を“知ってる”んだ、私は。
でも、きっとそれは絶対じゃない。
「変えたいと思ってるから、私は今ここにいるんですよ」
「・・・不思議な人ですね、キミは。というか謎です。ボクより年下なのに・・・」
いや、実は結構年上なんです。
とは言えるはずもなく、変な罪悪感を感じながら苦笑いをすることで誤魔化した。