第17章 波の国の悲しさ。
「で・・・」
『?』
「できた・・・!」
勢いよく走りだした私は見事木登りに成功した。
なんとまあ、空がよく見える。
ガッツポーズをしているとスイレンの得意げな声が聞こえてきた。
『ほらね、言ったでしょ』
「うん」
『さて、じゃあ僕と組み手しよう?』
「・・・へっ?」
何を言い出したんだ、コイツは。
そう思っていたのが顔に出たのか、スイレンは人型になると『ひどいなー』と含み笑いで言った。
『だって出来てることしたって意味ないでしょ』
「それはそうだけどさ、」
『じゃあ行くよ』
「えっ、ちょっと待っ―――!」
言い終わる前には、私が立っていた木の割と太い枝は、
「ちょっと!危ないじゃん!」
『行くよって言ったもん』
地面に落下していた。
「だからって、木をへし折る必要はないでしょ!?」
『ほら、よそ見しないで!』
「ぎゃッ」
何故だかスイレンのテンションが高い。
いつもは黙って殴りかかってくるくせに、今日は一段とよく喋る。
スイレンとの組み手は常に実践的だ。
だから、走ったり、動いたり、とにかく休む暇もなくとことん追いつめてくる。
『あ、ルールはいつもと同じでどこに行っても構わないよ。ただしこの森の中だけね』
「・・・」
『あと、いつも通りクナイとかも投げてよし―――何なら、写輪眼も使っていいよ?』
(ムカつく・・・!)
アイツ、絶対私のこと挑発してきてるだろ!
サスケに劣らず、案外負けず嫌いな私に火がつく。
と言っても、それに気付いたのはここ最近だ。
もうこれ“サバイバル演習”みたいなもんじゃんー・・・と最初に思っていたが、慣れっていうのは怖いもので、今ではそれが当たり前になってきた。
(写輪眼使わずにやろう。何かイヤだ!)
スイレンは強い。
私なんて遊ばれているだけだろうと、こうして組み手の修行をつけてもらっているときはいつも思う。
それでも、スイレンは確実に私を強くしてくれているのだから、それがたとえ辛くても私が諦めることはないだろう。
(それが強くなれる方法なら)
そして、今のところ一度もスイレンにダメージを食らわせることに成功した試しがない。
(今日こそ一手だけでも決めてやる)
そう心に決めて、私はクナイを投げた。