第17章 波の国の悲しさ。
約一分後、一つの足音が近づいてきた。
そして、ネネを肩に乗せたままじっと待つ。
すると、
「あ・・・」
という声が私の耳に入った。
振り向けば、そこにいたのは待っていた人物で、目が合い、笑って会釈すると、向こうも同じように返してくれた。
「―――・・・そのフクロウ、」
「え?」
「可愛いですね。キミのですか?」
(・・・これは予想外・・・)
「はい。・・・まさか、あなたの方から話しかけてくれるなんて思ってませんでした」
「え?」
「初めまして。今日はあなたに会いに来たんです・・・―――白さん」
そう言うと、彼は、後ろに飛び退き私から少し距離をとった。
その目は警戒の意を表している。
「・・・キミ、何故ボクの名前を?」
「その質問には答えられませんが・・・一つ言えるのは、私はあなたの敵ではないということですね」
「・・・そんなこと信じられるとでも?」
「・・・まあ、そうなりますよね」
やはり簡単にはいかないか。
いや、分かっていたけれども。
「じゃあ・・・少しでもいいんで私の話を聞いてもらえますか?決してあなたには損にならないと思いますけど」
「・・・何故そう言えるんですか?」
「さっきも言いましたが、私はあなたの敵じゃないです。むしろ、白さんを助けたい」
「・・・信じられませんね」
「はい。最初から信じてもらえるとは思っていません」
笑ってそう言うと、白の表情がさらに険しくなった。
その間に、いつのまにかネコの姿になっていたスイレンが白の方へと行く。
(・・・スイレン?)
「スイレン、何してんの?」
「このネコもキミの・・・?」
「ええ、まあ、はい。まあいいや。じゃあ話、続けますね」
スイレンの謎の行動に首をかしげつつも、話を再開する。
白は、スイレンが自分に近づいてきて、さらには足に体を擦り付けているという状態に、拍子抜けしたようで、しゃがんでスイレンの頭を撫で始めた。