第17章 波の国の悲しさ。
数時間後。
日は傾き、空はオレンジ色に染まってきた。
「おっそ・・・遅い、遅すぎる!何で出てこないのよ、白は!」
もともと、じっと待つのは得意ではないので、そろそろイライラし始める。
「くっそー・・・昼に起きたのが悪かったか・・・」
『そうだね、キミはもうちょっと早く起きた方がいいよ』
「返す言葉もないよ・・・」
うなだれながらため息をつき、頭をガシガシ掻く。
「ねえ、ネネ。ちょっと白がいる部屋見てきてよ」
『え・・・?ウチが?』
「うん。だって夜行性でしょ?」
『えー・・・確かに暗くても見えるけどさあ・・・』
「行ってらっしゃい。あ、出てきそうだったら戻ってきてよ」
『ネネ、頑張れ』
「なんだったら、誘い出してくれてもいいんだよ?」
『無理に決まってるやろ』
そんなわけで―――ネネが私の肩を勢いよく蹴って空に飛び立つ。
そのはずみで私の体もちょっと後ろに傾く。
うお、と思わず声をあげてしまい、ネネの脚力に感心するとともに、苦笑いをこぼした。
三十分後。
「あれ、ネネ・・・?」
『ホントだ。ってことはそろそろ出てくるんじゃない?』
空から降りてくるネネの姿を確認するとともに、私の中に緊張感が生まれる。
(弱気な感じは見せちゃダメ。余裕な感じに振る舞わなきゃ)
『来るで!ウチほんま上手いことやったわあ』
嬉しそうに言うネネに一つ笑いを返し、深呼吸する。
(“うまくいけばいい”じゃなくて、“うまくやる”の)
すると、私の緊張がスイレンに伝わったのだろう。
『大丈夫、僕がついてるよ』
不意にそんな言葉が耳に入り、強張った頬の筋肉がだんだんいつも通りに戻っていく。
「・・・ありがとう」
口角をあげてみせるとスイレンも笑い返してくれた。