第17章 波の国の悲しさ。
それはネネが道案内をし始めてから一時間ほど経ってからだった。
「―――ちょっ、ちょっと止まって!」
私が急に少し大きな声を出すと、スイレンは私の方を振り返り、スイレンの頭に乗っていたネネはビクッと体を震わせて首だけ私の方を見た。
『どうかしたの?』
「ちょっとあっち入って進もう」
『えっ、そっちは森だよ』
「そんなの見たら分かるわ。いいから早く!」
私がせかしたように言うとスイレンは“?”を浮かべたまま森の中に入って行った。
『ちょっと、どうしたん?』
「ほら、あそこ。前見て」
私はある方向を指さす。
その方向にスイレンとネネが目を凝らしていると、最初にスイレンが何かに納得したように『ああ』と言った。
それに対し、ネネはいまいち理解できてないようで訳が分からないという風に私を見た。
『何や、人がおるだけやろ』
「え、うん・・・まあそうなんだけど」
『お前はバカだね、ネネ。もっとちゃんと見て』
『んー・・・?』
再度、人がいる方をじっと見つめること三秒。
やっと分かったのかネネは『ああ!』と声をあげた。
『ウチ見たことあるで!あの黒髪の子』
「うん」
『あれや!前ウチに伝言頼んだとき、寝とった子!』
「正解!」
つまり、誰かと言うと。
「あの子ね、実は私の兄なの」
『・・・へっ?』
「もちろん、血も繋がってるよ。あ、でも訳あって私死んでることになってるからさ」
『へっ?えっ?』
「名前はサスケっていうの。サスケ兄さんイケメンでしょ?さすがイタチ兄さんの弟だよね」
私がクロの姿になり、そういうとネネは訳が分からなくなったような声をあげた。
「あ、スイレン、見失わない程度に後つけてって」
『分かった』
そして話を再開する。
「で、分かったかな?あ、ちなみに私だよ。ハルだからね」
『う、うん・・・?』
「あ、あとね、この姿の時はクロって呼んでね。絶対だよ。いい?口が裂けても“ハル”だなんて呼ばないでね」
私が笑いながらそう言うとネネはコクコクと上下に首を振った。
「それでよし!・・・ネネ?大丈夫?」
『え、うん・・・なんかややこしいな・・・』
やっと理解できたようなネネの頭を撫で、サスケを含めた四人のうしろ姿を追うことにした。