第17章 波の国の悲しさ。
『ハル、準備はいい?』
「ちょっと待ってよ、スイレン。じゃあイタチ兄さん、行ってきます!」
「気を付けろよ、ハル。いいか、危険だと思ったらすぐに逃げろ」
「うん、分かってるよ」
今日はサスケたち第七班が波の国に出発する日。
イタチに今日のことは言えないので、ネネたちのところへ行くと言った。
(ネネたちのことは“この前拾った動物たち”ということにしておいた)
「それにこの子もいるし」
『僕のこと?えへへ』
「そうよ、スイレン。頼りにしてるから!」
「心配だ」
「大丈夫だよ、イタチ兄さん心配しすぎ!じゃあ、行ってくるね」
スイレンに跨り、手を振る。
イタチは最後まで心配そうな表情で私に手を振り返してくれた。
「・・・・・・どこ、ここ?」
『・・・さあ?』
波の国はどこにあるのかさっぱり分からなかった私たち。
とりあえずサスケたちの後をついて行こうと思っていたのだけど・・・。
「分からん!皆無!」
(ちょっとゆっくりしすぎたか・・・?)
朝寝坊したからか、それとも小南ちゃんと話をしすぎていたからか。
どちらにせよ、迷ってしまったことは確実だ。
「あちゃ・・・やっちゃったよ、どうしよう」
『ホンマ、しっかりせんとアカンやろ』
「・・・・・・・え?」
・・・今、ネネの声が聞こえた気がする。
頭上から声が聞こえたと思えば、スイレンの頭の上に何かが乗った。
『ん?ハル、久しぶりやな。なんや、水臭いな。何でウチに言ってくれんかったん』
「・・・ネネ、何でここに?」
『主様から今日のことは聞いとったんやけど、やっぱり心配でな。でも、ウチが来て正解やったろ?』
迷子じゃん、今。
そう言われて返す言葉もなく、苦笑いしかできなかった。
『ネネ、いつまで僕の頭の上乗ってるつもり?』
『あっ、主様!元気そうで何よりや』
『ねえ、お前さ、僕の話聞いてる?』
『いやあ、主様でもこんなミスするんね?じゃあ、今からウチが案内するから。―――――あ、まずはここまっすぐね』
『・・・もういいや』
スイレンの言葉もむなしく、ネネに届くことはなかった。
いつもの元気なネネに自然と笑みがこぼれるも、何故波の国への行き方を知っているかは謎だった。