第16章 三代目火影とクロ。
「ごめんなさい、言っている意味が・・・」
「そのまんまじゃ。お前だって、兄のことが心配だからこうして見に来ておるのじゃろう?」
何も言えなくなった私に三代目は「まあ、」と付け足して言った。
「これはあくまで提案じゃ。もちろん今まで通りでも構わない」
「・・・・・・」
「返事はいつでもよい。じゃが、もしここにくるならそれなりの対応はするつもりじゃ」
三代目の言っていることの意味がいまいち理解できない。
私に、イタチの元から去れ、と・・・?
いや、そういう意味で三代目は言ったんじゃない。
私のことを思って言ってくれたんだ。
(どうしよう。ああ、もう・・・私が、二人いたらいいのに)
思わずそう考えてしまうほどだった。
でも――――・・・
「いえ、三代目様。本当にありがたいお話です」
「・・・」
「ですが、お断りさせていただきます」
そう言うと三代目は驚くわけでもなく、ただ静かに「そうか」と一言呟いた。
「なんとなく、そんな気はしておったんじゃ。じゃが、聞いてよいか。――――・・・何故じゃ?」
三代目は眉を下げて、私に聞いた。
(分かっていたのに聞くなんて。三代目は優しい人だ)
知ってる。変わらない優しさ。
三代目がいてくれたからこそ、“クロ”が生まれて、サスケやナルトに会いに行けている。
「三代目様は本当にお優しい方。その優しさに兄は救われた。兄がときどきここに来ていること、私、知っています」
「・・・・・・」
「私は、そんな兄を支えたいんです。とはいえ、私が支えれるなど微塵も思っていませんけど・・・0.1㎜でもいい。それだけでも、と思って」
「・・・そうか」
「サスケ兄さんなら、今は大丈夫です。ナルトくんがいてくれる、カカシがいてくれる、サクラちゃんもいる。だから――――・・・・」
そこまでで言葉に詰まってしまった。
何も言葉が思い浮かばない。
何か言わなきゃと思っていた私に、三代目は私の頭に手を乗せた。
「っ?」
「お前は、フガクに似て頭が良いな。ミコトにもよく似ておる。その品のあるところとかな。そして、イタチによく似て、大人びている」
「・・・そう、ですか?」
「ああ。何じゃ、笑っているのか?」
「はい。そんなこと、初めて言われたので、嬉しいんです」