第15章 “自己修復”というもの。
「・・・あの、改めまして、ハルです」
「さっきも言ったけど、知ってるー・・・ぜ?」
飛段が大きな鎌を下につき、よいしょと言いながら腰をあげる。
何だかオッサン臭いが、それは口が裂けても言わない。
「そう、なんですか」
「ああ」
話す内容がなくなって、気まずくなりつつある空気を振り払うように、飛段がソファに腰掛ける。
鎌はその姿はどこからどう見てもヤンキーにしか見えなくて何とも言えない。
スイレンは珍しいものを見るような目で飛段を見つめていた。
「ちょっと、こら・・・そんなに見ないの」
スイレンに小声で言うが、スイレンは笑って飛段の方に歩き出す。
あっ、ちょっ――― と言いかけるが、スイレンは何をするつもりか分からないのでスイレンに近づく。
そして、スイレンがソファの真後ろに来たとき。
それは起こった。
『わっ』
「っお―――!?」
「あ、あぶなっ――!」
スイレンがソファに立て掛けてあった鎌に足を引っかけた。
それだけならまだいい。
だけど、それがスイレンの方に倒れてきていたのだ。
(間に合って――――!!)
全てが、スローモーションで見えた気がする。
「ッおい!!」
『は・・・ハル・・・?』
私の口から小さく悲鳴が洩れた。
思えば、あの時はただ反射的に動いただけだった。
そう、“体が勝手に動いた”というのはこういうことなのだろう。
『ハル!!』
――――私の手のひらに、刺さったのだ。
飛段の鎌が。
「角都!!どこ行ったんだよ・・・!」
ズキズキととてつもなく痛む手のひらからゆっくりと刃を抜く。
その瞬間、私の腕から力が抜けてダランと下に垂れると同時に強い脱力感に襲われてその場に座り込む。
『ハル、ハル・・・』
スイレンが私の名前を呼んでいるが答えることはせず、ただ目を閉じる。
(・・・あれ・・・?)
手のひらからだんだんと痛みが消えてくる。
目を開けると、どんどん傷が閉じていっている。
自分でもいまいち理解できない事態だが、大体の説明はつく。
(多分・・・この前スイレンと話した、傷を自己修復出来るってヤツかな・・・)
そして、ちょうど角都の声が聞こえたところで、痛みは完全に無くなった。