第15章 “自己修復”というもの。
破片を一つ拾ったとき、指先に違和感があった。
「・・・えっ・・・?」
ふと、手を見ると少し血が出ている。
きっと、ガラスで切ってしまったのだろう。
そう思った。
だけど、私が声をあげてしまったのは単に切ってしまったからではなかった。
「・・・・・・」
(傷が、もう塞がってる・・・というか、無くない・・・?)
自分の手をあらゆる角度から見ても、それは変わらない。
ガラスを手に持って、試しに力一杯握りしめる。
手を広げてみると、みるみる傷が治っていく。
「どういうこと・・・?」
しばらく手を見つめたまま、私は動けなかった。
「おい、お前何してんだよ」
ふと、その声で我に返った。
ドアにもたれ、こちらを見ている彼と目が合う。
「・・・サソリ・・・」
「・・・イタチ、帰ってきたぞ」
そう言うと、ずかずかと部屋に足を踏み入れ、私の前まで来る。
「コップ、割ったのか」
ふと手元に目線を戻すと、先程と変わらぬ状態があった。
少し、ボーッとし過ぎていたみたいだ。
「ごめん、今片付けるね」
慌ててガラスに手を伸ばす。
が、その手は目の前の彼に払われていた。
「・・・何スか」
「お前、馬鹿か?」
ジト、とサソリを見つめるも、呆れたような目で返され、さらにはため息までつかれた。
「手ェ切るぞ」
「・・・・・・!」
その言葉に思わずポカンとしてしまい、虚を突かれたような気分だったが、その間にサソリがさっさとガラスを拾い始めていたので、おとなしく見ておくことにした。
「ありがとう」
「は?」
「心配してくれてるんでしょ」
そう言うと、サソリは「馬鹿じゃねえの」と一言呟いただけで、何も言わなかった。