第15章 “自己修復”というもの。
水が入ったコップを手に、デイダラの部屋の前に立つ。
さすがに、いきなり入るという勇気ある行動はできないので、コンコン、とドアをノックする。
「・・・」
返事はない。
といっても、このまま終わるのもどうかと思い、おそるおそる取っ手に手をかける。
「入りますよ・・・」
小さくか細い声で一言言い、そろり、と部屋に体を滑り込ませる。
ベッドにはデイダラが寝ているようで、それを確認するとそっと近づく。
「デイダラ・・・?」
若干苦しそうに息をしているデイダラの横の机にコップを置く。
「・・・苦しそう・・・」
一体どんなことをして風邪をもらったのかは知らないが、また水遊びをしたりしたんだろうか。
デイダラの横顔を見ながら、私は、早く良くなればいいな、と願った。
「・・・い、・・・!」
「・・・?」
「おい、起きろ」
バッと体を起こすと、デイダラのドアップが目の前にあった。
「え、あれ・・・?」
どうやらいつしか私も寝てしまっていたようで、それをデイダラが起こしてくれたらしい。
「デイダラ、 もう大丈夫なの?」
「・・・よく分かんねえよ」
と言いつつ、口調はダルさを表している。
そして、コップに入った水を見つけると、一気に飲んだ。
「っはー・・・」
息をついたデイダラから、空のコップを受けとる。
つもりだったが。
「あっ」
「えっ」
デイダラの手がツルッと滑り、コップが――
パリーン、と清々しいほどにうるさい音がして、コップがガラスの破片へと変化した。
「・・・」
「・・・」
互いに沈黙。
「・・・ごめん」
何秒かの沈黙のあと、デイダラが謝る。
私も病人に何か言うつもりもないので、ただ頷いて返すと、その回収作業に取りかかる。