第14章 バレンタインの出会いと決心。
『ハル!!』
「っは――・・・」
頭がガンガンする。
目を開けると、目の前には人型のスイレンの姿があった。
「っつー・・・ここ、どこ」
『うん、僕も分かんないけど・・・あ、動いちゃダメだよ。あと、悪いけどキミの腰についてるバッグの中に入ってる包帯とか何やら使ったから』
額に手を当てると、どうやら包帯らしきものが巻かれているようだった。
スイレンに促され、再び横になる。
目だけ動かして辺りを見渡すと、今私たちがいるところは、木に囲まれていて、外がどうなっているかは分からなかった。
「・・・ねえ、スイレン。包帯、巻いてくれたんでしょ?ありがとう」
『別に、何てこと無いよ。とにかく、無事で良かった』
スイレンはそう言うと、寝転がっている私の傍に来た。
「スイレン・・・?」
『お腹、もう痛くない?本当、ネネが―――』
そういえば、お腹に何かが直撃してきたんだったな。
そう思い出すと同時にどこかから声が聞こえてきた。
『ハルー!!』
「うへえっ!?」
お腹に衝撃が走る。
ネネの声だ。
それと同時に私は確信した。
「あ、アンタでしょ・・・私の腹に直撃してきたの・・・」
そういえばスイレンの背中から落ちるとき、ネネの声がうっすら聞こえたかもしれない。
お腹の辺りにいるネネを手探りで撫でて、軽く身体を起こす。
私がネネの名前を呼ぼうとしたとき、鼓膜を震わすような、空気もビリビリするような、大きな声が響いた。
『お前ッ、いい加減にしろ!!』
スイレンだった。
「す、スイレン・・・?」
驚いたのは私だけじゃなくて、ネネもビクッと身体を強張らせた。
『お前なら僕の言いたいことくらい分かるよね?もし打ち所が悪かったらどうするんだ?お前が治せるのか』
『本当、ハルに僕の力分けといて良かったよ。まさかお前にやられるとはね』
初めてだった。
スイレンの怒る姿を見るのは。
かなり頭にきているようで、ネネに答える隙も与えない。
ネネは今にも泣きそうだ。
それを見て、仲裁に入ろうと試みる。
「ま、まあ、スイレン、一旦落ち着こう?」
『無理だね』
・・・それが失敗に終わることなんて分かっていたけど。