第14章 バレンタインの出会いと決心。
二時間後。
「うっわ・・・」
『ハル、大丈夫?』
うん、大丈夫・・・だと思う。
『・・・酔ったの?』
無言で頷くと、スイレンは近くの木陰に私を下ろした。
「ありがと・・・うっ」
『もう・・・』
後先考えずに食べるとこうなる。
ちょっと馬鹿だったかも。
木の下で寝転がると、ため息をついた。
「ハァ・・・」
しばらくボーッと空を見上げていると、私の目に信じられないものが飛び込んできた。
「―――えっ」
―――ん?
ちなみに言葉を発したのは私も無ければ、スイレンでもない。
「・・・」
「・・・アハハ、こんにちは!」
どうしたの?と近付いてくるのはぐるぐるのお面。
言っておくが、コイツは木から出てきた。
『・・・キミ、知り合い?』
「・・・いや・・・」
知り合いじゃないけど、知っている。
“グルグル”、もしくは“トビ”。
目の前で、しゃがみ、覗きこんでくる彼を体を起こして見上げる。
(何でここに、)
「うっ・・・。おぇえ―――」
そう思ったところで、猛烈な吐き気が襲ってきた。
「・・・ごめんなさい」
「気にしない、気にしない!」
吐いて、吐いて、胃液が出てしまうほど戻してしまった。
「・・・服、汚してしまって」
――トビの服に。
あ、死んだわ。
そう思ったが、中々吐き気は治まらず。
スイレンは初めて見るであろう(汚いけど)嘔吐に身体を硬直させていた。
「大丈夫、ほら」
トビはそう言うと、“それ”がついた裾部分をビリビリッと破った。
そして、サスケからもらった、チョコがたくさん入っている袋からチョコを出し、その袋の中に破った裾部分を入れて袋口を結んだ。
「・・・あ、ありがとう、ございます」
「どういたしまして!」
表情は面で見えないが、声色から怒っていないことが伺えた。
そのことにまずホッとすると、スイレンに向き直り、持っていた財布を渡す。
「ごめん、スイレン。ちょっと水買ってきて・・・」