第14章 バレンタインの出会いと決心。
数十分後。
「あー・・・ちょっとお腹一杯かも。ねえ、持って帰ってもいい?」
そろそろ私の胃も限界を迎えたようで、胃もたれどころではなく、何だか鼻血が出そうだ。
「勝手にしろ。つか、お前、よくこんなに食べれたな」
「そうかな?でもちょっと、気持ち悪いかも・・・」
うぷっと口を抑えるジェスチャーをすると、サスケは眉を寄せた。
「・・・嘘だって、冗談だよ」
ハハッと笑うと、スイレンがよろよろと私の足元に来た。
尻尾も下がっている。
『ねえ・・・帰ろう。僕、ここにいると鼻がおかしくなりそう・・・』
「あ・・・ごめんね、スイレン。じゃあ、私たちはそろそろ帰るとするね」
そう言うと、サスケは立ち上がり袋にチョコを詰めた。
「・・・何してるの?」
「お前、持って帰るんだろ?」
「え、冗談だよ?」
「は?」
「・・・え?」
しかし、その会話をしている間にもサスケは手を止めない。
もう言うのやめよ、と心の中で思い、スイレンの頭を撫でる。
「まあ、このくらいだな」
「結構多いね・・・」
サスケの言う「これくらい」とは結構な量だった。
ふと、部屋を見渡すとチョコが見当たらない。
「・・・もしかして、これ全部?」
そう聞くと、サスケは頷いた。
「食べなよ・・・。せっかく貰ったんでしょ?」
「いらん」
サスケは頑固だ。
そのことを今更ながら思い出すと、大人しくサスケから袋を受け取った。
しかし、やっぱりサスケはモテるんだなあ。
そう思いつつも、ポケットに手を突っ込む。
「じゃあ、これ。私からのバレンタイン」
「・・・お前、俺の話聞いてたか?」
ポケットから出したのは一つのチョコレート。
小南が買ってきたやつ。
「大丈夫!ビターだからそんなに甘くないし、サスケも少しは甘いもの食べなよ」
そう言って、やや強引にサスケの手に握らせる。
「じゃあ、私はもう帰るね。バイバーイ」
サスケに手を振ると、サスケも珍しく手を上げた。
シーンと静まる部屋。
サスケは、貰ったばかりの一つのチョコレートを口に入れた。
「・・・やっぱ、甘ェ」
でも、まあたまにはいいかもな。
サスケは窓から見える少女の後ろ姿を見ながら、そう思った。